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腰が砕けたエリーゼは、文字通り砕けてその場に座り込んでいた。
そんな彼女の様子にマリィは驚く。
「どうされたのエリーゼさん、大丈夫?」
助け起こそうとマリィもしゃがみこんでエリーゼに寄り添った。
エリーゼの肩と手にマリィは自分の手を添える。
自分の肩に添えられたマリィの手に、エリーゼは自分の手を重ねて、マリィを見つめた。
その目には涙が溢れていて、その目を見たマリィは困惑する。
「エリーゼさん、どうしたの?」
「⋯⋯」
「大丈夫?」
自分を気遣うマリィの声に、エリーゼは直ぐに反応を返せなかった。
王都の街の雑貨屋で、初めて鉛筆を見つけた日から、ずっと探していた人物は、エリーゼが少し手を伸ばせば見つけられるほど近くにいたのだ。
「マリィさんは、ランドセルをご存じですか?地下鉄は?飛行機は?」
「へぇっ!?」
マリィは自分の耳を疑った。
脳が理解するより先に、変な声が勝手に自分の口から飛び出ていた。
エリーゼが尋ねたそれらは、常にマリィの頭の中を占めていた。スケッチブックに書き殴り、どんなものかを説明する。それは今のマリィの仕事だったからだ。その代わりといっては何だが、前世の真理子の時の肉親の顔が、薄れていっていた。どんな風に生活していたのか、大まかな事はある程度は覚えているけれど、細かい所までは、前世を思い出したあの階段から落ちた時よりも曖昧になっているのだ。
そんなマリィの周りには話せない秘密を、エリーゼが簡単に口にしているのだ。
そしてその可能性をマリィは、初めて感じた。
「エリーゼさん⋯《《あなたも転生者》》?」
「やっぱり⋯前世の記憶で作ったのよね。鉛筆も消しゴムも鉛筆削りも」
前世の記憶がある二人が漸くお互いを認識した時だった。
それから二人は、懐かしさが一気に吹き出して前世の記憶を話し始める。
はじめはお互いに覚えてることを話していた。
ただ二人はこの時は、自身の境遇までは話せていなかった。
それは単純に時間がなかったからだ。
二人は前世の記憶も大事ではあるし、懐かしさに震えるほど嬉しい気持ちもあるが、今世の仕事の重要性も忘れていなかった。
マリィとエリーゼは侍女だ。
朝が早くて夜が遅い。
そんな二人には睡眠が不可欠だった。
完徹で侍女の仕事は務まらない。
名残惜しくとも、マリィは「またお休みの日に話しましょう」と、その日は前世の記憶を持つ転生者を知る事ができた事に満足して部屋に戻った。




