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エリーゼは、第二王子に付いて隣国へ来たのだが、心の中で複雑な思いを抱えていた。
“転生者”であると予想する人物と連絡が取れなかった事が残念な事と、一緒に同行した侍女と仲良くなれそうにない上に、前世を思い出す前のエリーゼを見ているようで居た堪れない事が、胸の中で交錯していた。
第二王子の留学に同行したのは、護衛4名と侍従2名側近候補2名、そしてエリーゼも含む侍女2名だった。
そのもう一人の侍女の行動が、エリーゼの黒歴史とも呼べる時と同じで、明らかに男に媚びを売るしか興味がない女の典型だった。
名前はドリスで、生家の爵位は子爵家だった。
この爵位も厄介だった。
年齢は、エリーゼよりもひとつ下だが、彼女は侍女になってまだ1年だった。どうして今回のことで彼女が同行することになったのか、理由を彼女からは聞いたが、それは本当の理由ではないようにエリーゼには思われた。
そして、侍女になってまだ1年しか経過していないこともあり、王宮で働く侍女の上下関係が分かっていなかった。
いくら経過年数だと説明しても、ドリスは理解せず、実家の爵位で物を言うのだ。
曰く、子爵家の娘であるドリスの方が、男爵家の娘のエリーゼよりも発言権があると宣う。
そして厄介なのは、実は男性側の上下関係はそれで正解なのだ。
だから、ドリスの言う事にエリーゼが反論しても、周りは誰一人理解してもらえなかった。
だから頗る仕事がやり難い。
第二王子のアンドリューは、母国では学園を卒業している。隣国への留学は、あくまでも表向きの体裁で、本当の目的は婚約者である隣国の王女との親交を深めるものだ。
本来は、婚約者の王女がエリーゼ達の国に留学してくる予定だった。
だが、実を言うとまだ婚約を隣国側が渋っているため、現在は“仮”の婚約状態なのだ。
それを口説き落とすのがアンドリューの最大の仕事であった。
男ばかりだと何かと女性への気遣いが出来ないだろうという事で、侍女数名の同行が検討されて、それにエリーゼが選ばれたという事だ。
であるならば、王女の情報を先ずは調べなければならない。
国側に伝えられている王女の姿が、本当だとは限らないのだ。それがアンドリューに同行してきた護衛以外の者が担う事なのに、皆が皆ドリスに骨抜きにされて話しにならない。
唯一、アンドリューが幼い頃から付いている侍従のオットーだけは真面であるから、アンドリューにまでドリスの毒牙は届いていないのだけが幸いしている。
隣国に来て2週間目。
最初の王妃の宮の侍女長への報告に、エリーゼはドリスとその他の供の呆れた生活を書き殴った。




