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エリーゼが日に日に憔悴していっている時、彼女の頼みの綱のルーセントがどこにいたかというと、公爵家の領地だった。
セルディ伯爵でもあるルーセントは、次期ムートン公爵であるのは周知の事実。
それなりに後継者教育も施されていて、今の時期は領地で実地で学ぶのが毎年の慣習でもあったのだが、エリーゼは彼をとことん避けていた為、その事を知らなかった。
マリィはエリーゼの手紙をルーセントに渡されていたが、まったく読んでいなかった。
もらった手紙は直ぐに暖炉に直行。
普通なら礼儀知らずの所業かもしれないが、エリーゼの真意を知らないマリィにとっては、呪いの手紙ほどに嫌悪するものだ。
学園の時も、はじめの頃はもらった手紙はすべて開封していた。
その全てが嫌味や呪詛のようなものばかり、時には折れた(折った)剣先が無数に入っていたこともあった。
そんな手紙だと思っているマリィは、当然エリーゼの手紙もそのようなものと決めつけてしまい暖炉に直行するに至っていた。
◇◇◇
手紙の返事を憔悴しながらも待っていたエリーゼだったが、丁度その頃ルーセントのエリーゼへの執着が前公爵夫人エリフォーヌの耳に入った。
ルーセントの調査をしたエリフォーヌは、エリーゼがマリィの恩人であることを知ってはいるが、彼女の過去の所業であるカイザ事が未だに引っかかってもいた。
王妃の宮で監視目的で預かってもらったが、それ以降彼女が心を入れ替えたように働いている事も知っていた。
それでも身分の違いは覆せない。
男爵令嬢のエリーゼとルーセントの事に、エリフォーヌは一石を投じることにした。
そんなエリフォーヌの思惑など知らないエリーゼが、王妃に直接呼ばれたのは、ルーセントが領地へ行って1ヶ月後の事だった。
「王妃陛下、お呼びとお聞きいたしました。王妃陛下に置かれましては⋯⋯」
「エリーゼ、堅苦しい挨拶は不要だわ。頭を上げてちょうだい」
「はい」
王妃はエリーゼがこの宮に来てから、彼女の真摯に働く姿を見ていた、はじめは厄介な子を預かったと思ったけれど、宮の女官長も侍女長も次第に褒めることが多くなっていた。
だから本当なら手放したくはない。
それでもエリフォーヌの頼みと天秤に掛ければ、それは言わずもがなである。
「エリーゼ、あなたの働きにはいつも感心しているの。だからこそのお願いなのだけど、聞いてくれるかしら?」
「陛下が私ごときにどのようなお願いでしょうか?」
エリーゼは、王妃陛下に直接呼ばれた事で、これは断罪ではないかと怯えていた。だからこそお願いという言葉が不思議だった。
「あなた第二王子付だったでしょう?」
「はい、左様です」
「あの子数年留学することになったの。従者だけでなく侍女も付けようかと思っているのだけど、あなたにお願いできないかしら?」
「留学ですか?」
「えぇそう」
エリーゼは考えた。
第二王子の留学先が何処かは、今のエリーゼは知らない。
だがこれはチャンスかもしれない。
流石に留学先が無人の島国なわけはないから、流刑回避になるのではないかと思ったのだ。
「身に余る光栄にございます」
エリーゼは、王妃の願いを承諾した。
それはエリーゼにとっては、流刑よりも絶対ましという感覚の軽い気持ちだった。




