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マリィは領地から戻ってきたルーセントにうんざりしていた。どうやら意中の女性が、ルーセントが領地に行っている間に、第二王子殿下の留学先へと、同行してしまったそうで、そうなると数年は帰ってこないという、彼にとってはお先真っ暗という事態になったそうだ。
そう言った愚痴を延々と聞かされた上に、その原因の一つはマリィが手紙の返事をしなかったからだと、お門違いのことを言う。
マリィは、毎回何かある度にナリッシュ男爵家に来るルーセントは、友人はいないのだろうかと、思ってしまう。
それを言うと、マリィが友人だから何もおかしい事はないと言い出す始末。
だが、マリィはその辺は日本人の時に、色々と目にしたり聞いたりして知っている。男女の友情が成立するのは、全体で1%という低い確率なのだ。
そしておそらく、マリィとルーセントはその1%に当たるのだが、周りがそう思ってくれないのが現状だ。
今回の事の背後にエリフォーヌが絡んでいるのではないかと、マリィはちゃんと理解している。していないのは、次期公爵のくせに、婚姻に夢を見ているルーセント位だ。
「マリィの返事をかなり気にして待っていたんだ。きっと大事な事が書かれていたんだろう?どうして返事を書かなかったんだ!」
ルーセントが鬼の形相でマリィに詰め寄るけれど、返事など書けるはずがない。何故ならまったく開いてもいないのだから、だがそれをルーセントに言うのは憚れる。彼はせっせと伝書鳩よろしく、意中の女性のお手紙をマリィに運んでいたのだから。
それにしても⋯⋯。
どうしてそんなに返事を待っていたのだろうか?
ルーセントの事に対するマリィへの返事と考えられるのは、マリィから身を引きますなどの言葉位だ。
でもルーセントはその人が好きだと言っているはずなのに⋯。
そこまで考えてマリィは傍と気付いた。
全てが自分の勘違いだったら⋯。
だがルーセントの言葉の数々を思い起こしても、勘違いする要素が思い至らない。
そこで思い切って、今まで全く興味がなかった為、聞く必要性を感じなかった事をマリィは、ルーセントに質問した。
「ねぇ、ルーセント様。ルーセント様が気になっていたという、あなたのお好きな方というのはどなたですの?」
マリィの質問に、「嫌だなぁ好きとかでは⋯」とか「まだそこまでは⋯」などと、なんだか煮え切らない言葉を、指で頬を掻いたり、自分の頭に手を置いて髪を撫で付けたりと、わかり易く照れて、ルーセントはなかなか口を割らない。
イライラしながら根気よく待つと、ようやくその名を口にした。
「実はね、マリィも知ってる人なんだ。モエラーズ男爵令嬢だよ」
「は?⋯⋯⋯⋯」
マリィは、たっぷり20秒は放心していたが、気を取り直した瞬間。
「どうしてそれを早く言わないの!」
とルーセントを叱りつけた。




