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懇願するような瞳をルーセントに向けられ、マリィは大仰に溜息を吐いた。
そのマリィの態度に傷ついたように、懇願から悲しい眼差しに変わるルーセント。
「どうして、私が会うという話になるんですか?」
「何故かは知らないけれど、マリィに会いたいって言うんだ」
「私に会ってどうするの?」
「さぁ?」
ルーセントの返事に、マリィは脱力した。
だが、その時唐突に閃いた。
これは、牽制ではないのかと。
昔、学園にいた頃も、ルーカスと同じ邸に住んでいるというだけで、令嬢達からやっかみで嫌がらせや嫌味を受けたことがある。
しかも、アマリーヌがばら撒いた嘘の噂のせいで、評判がガタ落ちのマリィには、何をしても言ってもいいという空気が学園に流れていたから、本当に散々だったのだ。
ルーセントは告白に手応えを感じなかったと言った。だけどそれ以降も、マリィが知ってるだけでも、かなり頻繁にルーセントは好きな人の所へ行っている。
相手の負担にならないようにと、態と花束を贈っていたらしいけれど、初めて食いついたらしいのが“品物”だ。
マリィの脳内では、学園で散々マリィに嫌味を言っていたご令嬢達が浮かぶ。
(間違いないわ、ここに来て物を贈られて、ようやくルーセント様との事を考えようと思ったのよ。でも昔の噂の事で、きっと私にルーセント様に近づくなという釘でも刺したいのかも。それ以外私には会いたいっていう理由は分からないわ)
エリーゼは、決してマリィに会いたいと言ったわけではない。
防犯ブザーを開発した人に会いたいと言ったのだが、ルーセントにしてみればそれはマリィなので、会ってもいいかどうかを聞く相手はマリィだ。
このルーセントの端折りが、マリィとエリーゼが会えるはずの最短の機会を失わせた。
二人の運命を分けた分岐点は、ここだったかもしれない。
勘違いしたマリィは、厄介事が舞い込む予感しかしないこの申し出を、けんもほろろに断った。
「ぜっっったいに会いたくありませんから!」
そしてこの断られ方で、ルーセントはマリィがとても嫌がっている事を、エリーゼに上手く伝えられなかった。
「ごめんね、どうやら今彼女は忙しいらしいんだ。又の機会に聞いて見るよ」
ルーセントはそうエリーゼに伝えた。




