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「うーん、君の頼みだから是非とも聞きたいんだけど、私の一存では無理なんだ。ちょっと時間をもらってもいいかな?」
ルーセントの言葉にエリーゼは頷いた。
会わせてもらえるなら、いくらでも待つそう思ったし、もし会うのを承諾してもらえなくても、手紙を書こうと思った。
宛先はわからなくても、ルーセントに預ければいいのだ。
エリーゼは防犯ブザーのプレゼントを、箱に丁寧にしまってから「ありがとうございます」といつもよりも心の篭ったお礼を言った。
ルーセントは、そんなエリーゼを見て、手応えを感じた。
「花よりも物だったんだな」
大きな勘違いである。
それでもマリィに、エリーゼと会ってもらえるように頼むため、またもや先触れなしにナリッシュ男爵家へと突撃した。
「何なんですか!あなたの頭の中には先触れってマナーは欠落してしまったんですか?!」
丁度、読書中だったマリィ。
物語の最高潮のクライマックスに差し掛かり、手に汗握る展開に興奮していたところで、メイドにルーセントの来訪を聞かされたのだ。
残りのページ数を見ても、人を待たせて読む量ではなかった。
思わず軽く舌打ちをして、驚くメイドとともに応接室に来たマリィは、開口一番ルーセントに怒鳴ったのだが⋯。
暖簾に腕押し
糠に釘
豆腐に鎹
浮かれたルーセントは、ニヤけてしまって全く反応しない。
腹が立ったマリィは、ルーセントの目の前で柏手を打った。
「えっ?」
「えっ!じゃないです!今日は何のようですか?」
「あぁマリィ、今日は彼女反応が良かったんだ」
「へぇ~」
ルーセントが、気になる女性に花束攻撃でアタックしているけれど、イマイチ心に響いていないようだと聞かされたマリィは、聞かされ続けていい加減うんざりしていたのもあって、商会で溜息をついていたルーセントに
「これでもあげれば」
と言って、商品化されたばかりの防犯ブザーを投げたのだが、まさか本当にプレゼントしているとは思わなかった。
しかも食いついた?
一体どんな女性なのだろう?
マリィは、興味もなかったので、ルーセントから相手の女性については聞いていなかった。
ただ自分と同じ男爵令嬢だということは、話のついでみたいなもので知っていた。
はっきり言って、ルーセントのその恋が実ったとしても、公爵家で許すかどうかは五分五分ではないかと、マリィは思っていた。
何故ならマリィとの婚約をエリフォーヌたちが、薦めていたのは、きっとマリィが王弟の孫だからだ。
マリィは普通の男爵令嬢ではない。
だけどそのことを知らないルーセントは、男爵令嬢でも公爵家は許容範囲と受け取っている。
いつかは、教えてあげないといけないのだろうか?でもそれって自分の役目ではないよね。
そう思って、口出しはしていなかったのだ。
物で食いつくのって、あまり良くないんじゃないかな?
どうやら相手の女性は肩書よりも物で釣られるタイプのようだ。
マリィはそう思った。
だから次のルーセントの言葉が、俄には理解不能に陥ったのだ。
「何かさぁ、マリィに会いたいらしいんだけど、会ってあげる?」
何言ってんの?
マリィは、すぐには言葉が出なかった。




