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シーン
と、漫画で描写されるような、音無しの空気間で、エリーゼの心臓の音はバクバクと凄まじかった。背中の汗は一筋二筋流れる速度が早い。
あちらこちらから刺さる視線は、多くはないが少なくもない、確かめたいがその方向に顔を向けるなんて怖くて出来ない。
そして少し目線を下げたその先には、顔を赤く染めた美丈夫が上目遣いでこちらを見ている。
(顔の整っている人って、真っ赤になっても整って見えるんだな)
現実逃避からか、全く関係ないことだけを考えるエリーゼ。
だがそれもそろそろ終わらせなければならない。
いつまでもここにこうしていても終わらないのだ。
「あの、少し考えさせてもらえませんか?」
「えっ?」
えっ?って何?
まさか断られるとは思ってなかったって事?
いや、断ってはいないわよ!
断りたいけどね!
こんな、人がいるところで、大っぴらに伯爵に恥をかかせるなんて真似、できませんから!残念!
と、エリーゼが思っている間に、ルーセントは心底がっかりと分かりやすく態度に出していた。
耳が垂れた大型犬のようだ。
「いや、そうだな急だから。うんそうだな」
何だか、独り言を呟いて、ルーセントは自己完結して立ち上がった。
「これはもらってくれるだろう。また今度返事を聞きにくるから」
そう言ってエリーゼに綺麗な花束を押し付けて、ルーセントはその場を立ち去った。
その途端、周りの空気が変わり、音がある日常に戻った。
エリーゼは、厄介この上ないと、溜息を吐き花束を抱え、ドナドナされるように項垂れて寮へと向かった。
◇◇◇
マリィが夕食を食べている時に、ルーセントの訪いをメイドが告げに来た。
どうして、ルーセント様は先触れを出さないのよ!
と、憤慨しながらも、もう一つ夕食の席を作るように言ってマリィはルーセントを食堂に招いた。
するとわかり易く落ち込んだルーセントが、食堂に入ってくる。
一気にマリィの食欲が失せた。
「どうしました?振られたとか?」
マリィは絶対に有り得ないことを口にしたのだが、ルーセントはそのマリィの言葉で、膝から頽れた。
慌てたマリィは、ナフキンで口を拭って立ち上がり、ルーセントの側に近寄った。
「えっまさか本当に?」
慌てたマリィの問にルーセントは首を振ったから、マリィはホッとしたのも束の間。彼は死にそうな顔をしてマリィを見つめた。
「考えさせて欲しいと言われた。これはもう駄目だろう?」
マリィはルーセントのその問いに「そうかもね」とは思ったが、口には出していない。心の中でそっと思ったことだ。
少なくとも、断りたいけどこの場では保留にしたほうが無難かな?と考えられる言葉だと思った。
こんなに好物件のルーセントを振る人がいるなんて!
「そんなに気を落とさないで」
マリィは、誰かは知らないが、美丈夫も偶には挫折を味合わなけりゃ、世の中不公平というものよ!
と、形だけの慰めの言葉をルーセントに掛けた。




