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今エリーゼは、人生の岐路に立たされている。
逃げたい
逃げたい
逃げたい
非常に逃げたい!
エリーゼは前世の記憶を思い出した時、この世界が漫画の世界だと気付いた。
そして自分が漫画の中でも転生者で、漫画の設定では乙女ゲームの世界ということになっていた。逆ハーを狙ったがそれに失敗して、最終的には大本命だった公爵令息のルーセントに、王宮の夜会で断罪される所謂ヒドインの役柄だった。
その際に、自分の主であり攻略対象だった第二王子から、流刑を命じられる。
何も持たされず無人島に流されるのだ。
そこで漫画も終わっている為、エリーゼが流された場所で、その後生き延びたのか死んだのかは分からない。
だからこそ、それまでの自分を変えて、真面目に働いてきたというのに⋯。
どうして攻略もしてないのに!
イベントなんてガン無視していたのに!
逃げたい
逃げたい
逃げたい!
今日エリーゼは、仕事が終わって、寮に帰る途中だった。
先日から表の仕事を任されるようになって、エリーゼは今覚える事が多すぎて、日々アップアップ状態だった。
裏の仕事と違って、表の仕事は一人で行うことが多い。
そして、人前に出ることも。
そうなるとかなり神経を使わざるを得ない。
そして今日の仕事は、神経をMAX使わないといけない仕事だった。
久しぶりにお互いの時間が取れた、国王陛下と王妃陛下のお茶の支度だ。
エリーゼが王妃の宮に配属になって、国王陛下を間近に拝謁するのは、今までに遠目で数回だった。
裏の仕事をしていると、王妃のプライベートゾーンには、朝の仕度と就寝の仕度のとき位しか入れない。
昼のご公務の時なども、エリーゼは今までは側に侍ることはなかった。
だからこそ緊張から、指先が震える中、両陛下にお茶を淹れる作業は、汗が背中を伝うほどだった。
もう今日はその仕事だけで疲労困憊だった。
疲れきってぼんやりしながら歩いていたのが、いけなかったかもしれない。
寮の帰り道にある、王城の廊下の柱に、ルーセントが凭れているのに気付くのが遅れた。
あっ!
と思った時には声をかけられていた。
「モエラーズ男爵令嬢」
「⋯⋯セルディ伯爵様」
無視もできずに、つい応えてしまったら、ルーセントはいきなりエリーゼの前で跪いた。
「モエラーズ男爵令嬢、私と婚約を前提にお付き合いして頂きたい」
どこに隠し持っていたのか、綺麗な花束を差し出して。
ここは寮への帰り道だ。
同じ時間に帰寮する者もいる。
丸っきり無人ではないのだ。
ルーセントからの告白に、逃げたいエリーゼだったが、公開告白ならば逃げられない。
本当に強制力が発動したのだろうか?




