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ルーセントと言い合いをした数日後の休みの日、マリィは自室の部屋で読書に勤しんでいた。
ここ最近、コンロの事で頭を悩ませていたマリィだったが、休みの前日、開発部の技術者のレジンが、ようやくマリィの絵を理解してくれたようで、少し光明が見えた為、今日のマリィはご機嫌だった。
ゆっくりと本を捲っていた時、メイドが約束のない客の訪問を伝えに来た。
「誰?」
「セルディ伯爵です」
「ルーセント様?」
相手が伯爵の為、メイドは少し慌てているようだった。
応接室に通した聞き、マリィは急いで着替えて向かった。今日は父のセドリックは、朝から出かけていて不在だった。
「ごきげんよう、ルーセント様」
「マリィ済まない、約束はなかったんだが、不測の事態だ!」
ソファに座っていながら、分かりやすく慌てているルーセントを見て、珍しいとマリィは思った。
この応接室には、今メイドと護衛騎士が居て、所謂人前だ。
ルーセントは商会の開発室では、かなり素の自分を出してはいるが、外では有り得ない。
「どうしました?」
とりあえずお茶をメイドに頼んで、直ぐに出してもらう。
メイドもマリィを直ぐに呼びに来たので、お茶を出すまでに至っていなかったのだ。
「まぁとりあえず、お茶を飲んで落ち着いてください」
マリィに促されルーセントはお茶を飲む。
慌てていてもその所作は優雅だ。
「実は、今朝父上にマリィと婚約をしないかと言われたんだ」
「はぁ?今更ですか?」
「今更とは?」
実は、マリィには3年前のあの事故のあとに、エリフォーヌから軽く打診されてマリィは即座に断っていた。
もう既にその話はなくなっていると思っていたのに、まだまだ諦めてなかった?
マリィが、その話をするとルーセントは呆然としていた。
「マリィは断ったのか?」
「はい、だって身分差もありますし、私とアマリーヌ様が仲良くできると思いますか?」
アマリーヌは、ルーセントの妹で、マリィが学園を辞めなければいけなくなった元凶でもある。
マリィの言葉にルーセントは苦笑する。
「そうだったのか、まぁそうかもな。マリィが断るのも納得だ。それにしても身分差は関係あるか?」
「無いとお思いですか?次期公爵ですよ」
「だが、今は伯爵だ」
ルーセントが何を意固地になっているのか、マリィにはよくわからなかったが、このあと、マリィはルーセントに相談を持ちかけられた。
その話を聞いて、マリィは頭を抱えることになる。
そんな未来は予想できずに、何か思い詰めたように下を向くルーセントを眺めながら、エリフォーヌ直伝の優雅な所作で、マリィはお茶をコクリと飲んでいた。




