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ルチアの家のタウンハウスは、王都の郊外にあり、馬車で40分ほど走った場所だった。
そんなには長くないアプローチを抜けて、玄関に降り立った時、森の中に建てられたお邸だとエリーゼが思うほど、王都なのに自然豊かな場所だった。
ルチアは、インセル伯爵家の三女として生まれたが、インセル家は既にルチアの10歳上の兄が家督を継いでいて、ルチアの姉二人も嫁いでいる。
学園には通わせてもらえたが、ルチアに届いていた縁談は、後妻や商人が多かったそうだ。
数人お見合いのような事もしてみたが、ルチアは学園での成績が優秀だった事もあり、王宮へ出仕することを選んだ。
そんな事を、夕食のあとルチアとのお喋りで知ったエリーゼは、伯爵家の令嬢でも後妻などの話が出るのだと、初めて知った。
「エリーゼは、どうして侍女に?」
ルチアの質問にエリーゼは困ってしまった。
まさか、気付いたらなっていたなんて言えるはずもないし、同期は知っているけれど、その動機は前世を思い出す前のエリーゼの事だ。
どう言えばいいか、迷いながらも、前の素行の悪さはルチアも知っている事だと思い、前世以外の事を正直に話した。
「縁談のためにね。いいところに嫁ぎたかったの」
「あぁ、そういう人も多いわよね。何を隠そう私もそうだもの」
「えっでも」
「多分殆どの人の動機は、そうだと思うわ。エリーゼだけじゃないわよ」
「でも、前は男漁りなんてはしたないと言われたわ」
「うーん、まぁみんな動機は同じでも、明け透けには出来ないから、そう言うでしょう。それにあの頃のエリーゼは、仕事をしていなかったって聞いていたけど」
「あっ、それは本当。殆どしていなかったわ」
「そんな、堂々と偉そうに言わないの!」
ルチアが軽口の様に、エリーゼに「めっ!」と言うように、拳骨を頭の所で打つ真似をして言うから、思わずエリーゼは笑ってしまった。するとルチアも一緒に笑いだした。
一頻り笑い合った頃、エリーゼの心がふっと軽くなった気がした。
ずっとストーリーから外れた行動を取っていたエリーゼは、周囲の人の運命が変化していた事もなんとなく感じていた。
その最たる人がヒロインであるマリィだ、マリィも同じように前世を思い出している事を知らないエリーゼは、自分の行動でマリィが王宮を辞したのだと思い込んでいた。
だから、特に彼女には責任を感じていた。
時間は巻き戻せないし、エリーゼももう前のようにはなれない。
絶対に流刑なんてなりたくない気持ちは変わっていない。
それでも、エリーゼの行動で運命が変わってしまった人達も、どうか幸せになって欲しいと切に願っている。
最近そんな事を考え続けて、エリーゼの心は少し疲弊していた。その心がルチアと笑いあった事で軽くなった気がしたのだった。




