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午後になり、タウンハウスにナリッシュ男爵が帰ってきた。
エリフォーヌとマリィは丁度遅めの昼食を取っていたところだった。
セドリックは、メイドに言われて食堂にすぐに向かった。
「エリフォーヌ様、いらしていたんですね」
「あらっ男爵、おかえりなさい。マリアに呼ばれたと聞いてね。それならあなたが、私に相談するだろうと思って待ってたの」
「ハハハッお見通しですね」
セドリックは、エリフォーヌと話しながら自分の席についた。
そのタイミングですぐにお茶を出される。
タウンハウスの侍女とメイドは、ムートン公爵家から派遣されている。
数名は、男爵家で雇い入れているが、まだまだ覚束ない者ばかりで、今は鍛えてもらっているところだ。
そうでなければ、こんなに手際の良いメイドは男爵家だけでは雇えない。
一口飲むと、やっと帰ってこれたとセドリックはホッと息を吐いた。
「マリアとは久しぶりだったでしょう?」
「そうですね、子供の時以来です。まぁあまり覚えていないのですが⋯」
苦笑しながら話すセドリックに、本来なら王族のはずなのにと、エリフォーヌは彼が不憫に思えた。
「マリィの縁談の話ではなくて?」
「それもお見通しですね、いくつか渡されました」
セドリックのその言葉に、マリィが反応する。
「お父様、王妃様も私に縁談を?」
「あぁ、だがあまり深く考えなくとも良いと言われた。断る猶予は与えられているよ。あとで見てみなさい」
「はい」
断れると聞いて、マリィはホッとする。
本来なら許されないことだろう。
それでも、マリィの気持ちを慮ってくれる王妃陛下に、マリィは心の中で感謝する。
「でもね、男爵。先程マリィにも話したのだけど、私やアリアが齎す話は兎も角、マリィは早急に婚約者を決めたほうがいいと思うのよ」
「それは、マリィの仕事の件ですか?」
「それもあるわ」
セドリックは、もう一口お茶を口にした。
あの事故で、王宮を辞したマリィは、ムートン公爵家の商会で働き始めた。
毎日毎日、生き生きと働く娘を見ながら、セドリックはとても嬉しく思ったものだ。
月の半分は領地へと向かい、小さな領地で過ごす。
そうやって数年経過したら、マリィはあっという間にタウンハウスの金額をエリフォーヌに返済したと聞かされた。
そのお金は、今セドリックが預かっている。
エリフォーヌにマリィの婚姻の持参金にするようにと言われたのだ。
断ったが、結局断りきれずに預かることになった。
マリィのおかげで、タウンハウスでは食材が長持ちするし、暑い夏も部屋の中は快適だ。
この娘にそんな才能があったなんてと、セドリックは早くに学ばせなかった事を後悔していた。
マリィは前世の記憶を元に、色々とアイデアを出しているのだが、それを知らないセドリックは彼女に充分な教育を自分が与えられなかったことを申し訳なく思っていた。
マリィは学園も結局中途で退学せざるを得なかった。
王宮で働く事になったときは、試験が優秀だったと聞いて誇らしくも思ったし、期待していると試験を担当したリゼッタに言われて嬉しかった。
それも階段から落ちた事故で、辞さなければならなかった。
それにあれは事故ではない。
公にはならなかったが、あのあと王太子の婚約は解消された。
その時セドリックはエリフォーヌから聞かされたのだ。
但し、マリィがセドリックに心配かけたくないと言っていたからと口止めはされてしまった。
そんな事を考えながら、三口目のお茶を飲んだ時、エリーゼの事を思い出した。
「そういえば、今日王妃陛下の宮まで案内してくれたのは、モエラーズ男爵令嬢だったよ」
マリィは父の言葉で、エリーゼの事を思い出した。




