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エリーゼは、部屋の左側の壁際に、控えていた。
応接室の侍女の配置は、予め決まっていた。
驚いたのは、お茶を淹れたのが、王妃専属侍女の中でも、最古参のリゼッタ様で、彼女は名誉侍女とでもいうのか、元は今は亡き王弟殿下の宮の侍女だったのを、王妃様に請われてこちらの宮にやってきた人だと聞いている。
リゼッタ様の出仕はランダムで、滅多にお目に掛かれない雲の上の侍女だった。
エリーゼは3年この宮にいるが、お目にかかれたのは今日で2度目だ。
王妃陛下よりも稀少な方が侍女というのも変な話だが、事実だからしょうがない。
それにしても、ナリッシュ男爵って本当に男爵なのだろうか?
王妃様が呼び出して、幻の侍女がお茶を淹れる人物。そんな人は、エリーゼが知る中でも今までにはいなかった。
思わず、いけないこととは思いつつ、チラリとナリッシュ男爵を伺い見る。
顔はとてもとても整っていて、端正な顔立ちをしている。エリーゼと同じくらいの娘がいるなんて思えない程、若々しい。
エリーゼがそんな事を考えていたら、徐に王妃陛下が手を上げた。
下がれという合図だ。
名残り惜しかったが命令であるならしょうがない。
エリーゼも他の侍女と共に応接室を退出した。
部屋に残ったのはリゼッタ様だけのようだ。
「ルチアとエリーゼ以外は、通常の持ち場に戻っていいわ」
エリスラが、皆に声を掛ける。
残されたエリーゼは、ルチアというエリーゼより1年先輩と二人、廊下で控えているように言われた。
エリーゼはルチアとは、王妃の宮に来て3年間あまり話したことはなかった。
こんなふうに、部屋の外で待つことも今まではなかった事で、エリーゼは緊張していた。
この仕事も表の業務になるのだ。
「そんなに緊張せずともいいのよ」
「はい!」
緊張から声が掠れていて良かった。
そうでなければ必要以上に大声が出ていただろう。
思わずエリーゼは口元を両手で隠した。
その様子を見てルチアがクスリと笑う。
「表の業務が今日は初日なんでしょう?こういうときは変に方に力を入れると良くないのよ。中からいつ呼ばれてもいいように、適度の緊張と適度の緩み出そうよ。耳を傾けつつお喋りでもしましょう」
固まっていたエリーゼの肩の力が少しだけ解れたような気がした。




