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王都の空が白み始めた早朝
王宮の王妃陛下のプライベートゾーンでは、侍女等の交代に伴う申し送りが行われていた。
本日の担当侍女は8名、うち2名は見習いだ。
昨夜の夜番を勤めた侍女から、今日の担当侍女へと王妃の睡眠状態などが告げられた。
「エリーゼ」
「はい!」
本日の担当侍女の中で責任者になる、古参侍女のエリスラが、スケジュール表を確認しながらエリーゼを呼んだ。
「本日は王妃陛下にお客様がいらっしゃいます。あなたご案内役を務めなさい」
「えっ!は、はい!精一杯当たらせて頂きます!」
エリーゼは興奮していた。
王妃の宮の担当になって3年、見習いから正式な侍女に任命されて1年。
客人の案内役は、信頼された証のような職務だ。
突然の指名で、訪れた幸運に胸が震える。
申し送りが終わったあと、客人の詳細を確認するため、エリーゼはエリスラの元へ向かった。
「エリスラ様」
「あぁエリーゼ」
「あの、本当に私に?」
「えぇあなたも正式になって1年経過したもの。そろそろ表に出てもいい時期だと思うわ」
「ありがとうございます」
侍女の仕事には表と裏と呼ばれるものがある。
裏の仕事というのは、侍女の仕事の中でも裏方と呼ばれるもので、例えば王妃陛下の着替えを用意したり、お茶の為の茶器や茶葉を用意したりと見えない仕事を担当する。これは見習い侍女や勤続年数の短い侍女が主に担当する。
まだ正式な侍女になって1年しか経っていないエリーゼに、表の仕事が回ってくるのは異例な事だった。
エリスラの期待に応えなければと、エリーゼは気合いが入る。
「今日のお客様は、ナリッシュ男爵、午前にいらっしゃいます。この方は王妃様のご希望で来城されます」
ご希望というのは、王妃陛下が呼んだという事だ。
普段は、国王、王妃両陛下の公務に謁見がある為、宮の方へ来られる客人は滅多にいない。
その上で陛下が希望されて呼ばれたナリッシュ男爵とは、どのような人物なのだろう。
ナリッシュ男爵について、書かれた書類をエリーゼは目を通し始めた。
そこにある家族の欄を見て、エリーゼは、自分が前世を思い出すきっかけになった3年前の事故が頭に浮かんだ。
マリィという名のご令嬢。
あの時、エリーゼの上に降ってきたご令嬢と同じ名だった。
「あの方のお父上様かしら」
エリーゼの呟きは、勤勉な同僚達は仕事に追われて聞こえていなかった。




