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「ナリッシュ男爵は、貴族の階級では末端になるわ。あなたを守りたいけど大っぴらには守れない事はあなたもわかるわよね」
「はい」
マリィの父が、亡き王弟の子だというのは公には証明されていない。
だが、マリィの容姿を知っている人がナリッシュ男爵の父を結び付ければ、わかる人にはわかってしまうのだ。
そして今現在、その事を知っているのは王妃陛下とムートン前公爵夫妻。
侍女の時からマリィは、定期的に髪を染めている。鈍色掛かった金髪は、亡き王弟を彷彿とさせる物だったから、王宮では危険だったのだ。
元々その事で懸念されていたマリィの存在が、日常で便利な商品を開発する事ができるという付加価値まで付いてしまった。
2つともに隠してはいるけれど、どちらも知っている人は知っている秘密なのだ。
「未成年の時は、隠すのもまだ簡単だったわ。でも今はもう、隠せることにも限界があるでしょう。だから早々に安心できる誰かと婚姻したほうがいいと思うの。それで、今日はこちらへやってきたのよ」
「お気遣い頂きありがとうございます」
「ふふっ、男爵はいつ頃戻られるかしら?」
「今日お父様は王妃陛下と⋯」
「あらっマリアも手を打とうとしてるのかもしれないわね」
「王妃様が!」
「そりゃあそうでしょう。それにしてもラガン家は抜け目ないわね」
カイザは、3年前にルーセントの従者を解雇されている。
簡単に女に落ちる様は従者は、足枷にしかならないというのが理由だが、カイザはそう思わなかったようで、暫くマリィは彼に恨まれて付き纏われた。
それもルーセントが解決してくれたのだが、今カイザは騎士団に所属していると聞いていた。
今回来た縁談の釣書は、名前を聞いただけでマリィは即断ったため見ていなかった。
「ねぇマリィ、あなた誰か慕ってる人はいる?もし、いるのならその方と婚約したらどうかしら?」
エリフォーヌの言葉で、マリィの頭の中に真っ先にルーセントが浮かんだ。
浮かんだがそれを言うわけにはいかなかった。
彼は今はセルディ伯爵で将来はムートン公爵になる人。
マリィとは身分が違いすぎる。
末端貴族のマリィが望める相手ではないのだ。
それに、ルーセントはマリィに商会でも良くしてくれるが、それはあくまでも仕事仲間としてだ。
マリィは今自分がルーセントに好意がある事を自覚したけれど、諦めなければいけないと誓ったのも早かった。




