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エリーゼが医師から、仕事復帰の了承を得た日。彼女は王都へと買い物に出た。
4日ほど前に、アイナの看護は終了していた。
お礼を言うエリーゼに、仕事だからとアイナは言ってくれたが、日本人気質の前世を思い出したエリーゼは、ちゃんとお礼をしないと気が済まなかった。
かと言って、あまり仰々しいお礼は彼女が好まない事も理解していた為、看護メイド仲間で食べられるお菓子でいいかなと考えて、王都でよく行列ができると聞いていた店に足を運んだ。
店で一番人気だと言われたケーキは、流石に日持ちしない為、無難なクッキーとフィナンシェを箱に詰め合わせてもらう。
何だか前世の快気祝いを思い出す。
店を出たあとは、明日から配置換えになる、王妃陛下の宮で学ぶための覚書用のメモ用紙を買いに文具店に向かった。
そこでエリーゼは驚く。
店は文具店だが、雑貨なども置いていて、若いエリーゼ達の好む可愛い雑貨が有り、久しぶりに胸が踊る。
その店内の文具コーナーの方に、前世日本人だった衣里の頃に学校で使っていて、この世界でのエリーゼは目にした事がなかった物が目に入った。
「これって、どうして?」
評判がいいのか、店内に入ってくる女性が皆そこに一直線に向かっている。
数人ずつが並んで色違いを吟味しているのを見て、エリーゼは懐かしさからなのか、何故か目が潤んで来た。
そこに並んでいるのは、鉛筆と消しゴム、そしてミニサイズの鉛筆削り。
羽ペンが主流のこの世界。
最近では、隣国から入ってきた万年筆を王宮では使用している人が増えてきた。
そんな中で、鉛筆と消しゴムは画期的な商品だろう。
だがこの発想をしたのは誰なのか?
特に鉛筆削りまでが商品化されているのは、どう考えても衣里以外にも転生者が存在することを示しているようで、エリーゼは喜びに震えた。
「誰かな?どこにいるのかな?」
エリーゼは、自分と同じ転生者に会いたくなった。
「すみません、これって何処から仕入れているんですか?」
鉛筆を5本と消しゴムを2つ、鉛筆削りを一つ、エリーゼは購入して、店主に仕入先を尋ねてみた。
仕入先が分かれば、これを発案した人物に辿り着けるかもしれない。期待に胸を膨らませて、ドキドキしながら尋ねたが、店主は渋い顔をして腕組みで、胡散臭そうにエリーゼを頭の天辺から足元まで眺めている。
「教えられないね、これは扱う店の競争率が高いんだ。やっと販売権をもらったのに言うわけないだろう」
そう言われて、エリーゼは追い立てられるように店を出された。




