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それから、アイナは毎日エリーゼの世話に来てくれるようになった。下段とはいえ階段に二人分の重さで、打ち付けられたのだ。骨に罅が入ったり折れたりしていない事が奇跡のようだった。
エリーゼの体は打ち身とはいえ、完治まで1ヶ月ほどの療養が必要と診断された。
それを伝えに来たのは、医師ではなくエリーゼ達を纏めている王宮の侍女長だった。
王宮では王族毎に侍女長が存在する。
エリーゼが働いていた部署は、第二王子殿下の部署だった。
侍女長がそれを伝えに来たのは、丁度アイナが食事を運んできてくれた時だった為、彼女も壁際に控えて話を聞いていた。
「貴方の配置換えが決まったわ」
「配置換えですか?」
覚悟はしていた。ひょっとしたら馘首になる可能性もあるかもしれないと思っていた。配置換えで済んだその事に、エリーゼは安堵する。流刑回避のために真面目に働こうと思っても、馘首になったら挽回もできない。
「貴方の普段の仕事ぶりなら、王宮追放も話はあったのですよ。ですが今回貴方が庇ったナリッシュ男爵令嬢の後見が、公爵家だったことが貴方には幸いしましたね。とにかく、怪我が治ったら王妃陛下の宮に移動しなさい。それまではここでいいそうです。では、私は伝えましたよ。あとで書類を持ってくる者がいます。その者に渡されたら署名しなさい」
「はい、畏まりました。態々のお運びありがとうございます」
侍女長は、伝えるべきことを伝えると、踵を返して部屋を出ようとしていたのに、エリーゼのその言葉で立ち止まって振り返った。
「もっと早くそれほどの殊勝な態度を見せてくれていたら、私だって罰など与えたりしませんでしたわ!」
何故かそう言って、侍女長は今度こそ部屋を出ていった。
侍女長が出ていったあと、エリーゼは痛む体を我慢して、ベッドの上で扉の方へ頭を下げていた。
そんなエリーゼにアイナが不思議そうに話かけた。彼女は、エリーゼの世話をしながら、前とは打って変わったエリーゼに、少しずつ態度を改めていた。
「罰を受けていたのですか?」
「そうね、でもその罰は当たり前なの」
アイナにエリーゼが答える。
あの怪我をした日の前日、エリーゼはまたもや仕事中に、サボって裏口でお喋りしていた。
相手は、エリーゼが狙っていた、伯爵令息の家にも出入りしていると知った商人の息子。
その息子の体にベタベタと触りながら、お色気たっぷり&庇護欲そそる仕草という、難易度マックスの態度で、話しかけていたのだ。
だが、その息子に抗議をされた侍女長から、あの日休みだったエリーゼは、罰としてその休みを返上されて、王妃陛下主催のお茶会で仕事をするように言い渡された。
その時、適当にうろちょろして会場から逃げる途中であの事故にあったのだ。
それもこれも自業自得。
エリーゼに同情の余地はないのだった。




