第7話
鈴岡レイが中学一年生の頃、急に、氷が目の前に出現した。直前まで珍しく女の子を見ていた。
あの頃は小さかった。
そのレイが、頭一つ分は背の低い石山ヒビを前にして、堂々と、大きく、口角を上げている。
レイの中で、きっかけの子のことはいい想い出となって、閉ざされたところにある。
(それでいい)
とレイは思っていて、最上の選択だとも思っている。
今、彼の目の前にヒビがいる。
ヒビは、校舎横のコンクリートの段差に座っていて、学食後の昼休みを満喫しようとしていた。駄弁ることで。
そこで、レイはいつもなら横に並ぶが、
「後ろからギュってしていい?」
「え? え、まあ、いいけど」
ヒビは混乱した。受け入れる姿勢にはなる。段差に体育座りで。レイは、
「よいしょ」
と後ろを陣取ると、
「じゃあ肩にあご、乗せるけどいい?」
「う、え、う、うん」
足許から、コンクリートの柱が、ヒビの力によって伸び、花のようになる。
(いやいや、慣れればどうってことない、恋人同士普通にすること)
左の耳元で、レイの想いが音になる。
レイ自身は、小さかった自分ではできないことを今やれていることで、なぜか、自分を救ったような気がしていた。
ヒビは段々、彼の体温に慣れていった。不思議と安心する。コントロールがうまくいけば、コンクリートの花も消えた。
「昼ご飯おいしかったね、レイは何が一番好きだった?」
とヒビが聞くと、
「豚ステーキ」
「あら素敵」
「ヒビは? ヒビも言ってよ」
「んー、マッシュポテトかなー」
ヒビがそう言って、より背中を預けると、ヒビの目の前に大きな氷が現れた。
「何、反撃?」
レイはそう言って、その氷を消した。
「別にそういうワケでもないです」
「じゃあどういうワケ?」
「もっと密着してもいいよ、っていうか、こうしたかったんじゃないの? っていう。普通に座り直しただけだよ」
「そ、そう? ふうん」
レイはそう言うと、首の裏を掻いた。
ヒビは、
「ふふ」
と、自然と笑みをこぼしていた。




