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元始種になっちゃったら氷結種に恋をした  作者: 阿川時定


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7/8

第7話

 鈴岡(すずおか)レイが中学一年生の頃、急に、氷が目の前に出現した。直前まで珍しく女の子を見ていた。

 あの頃は小さかった。

 そのレイが、頭一つ分は背の低い石山(いしやま)ヒビを前にして、堂々と、大きく、口角を上げている。

 レイの中で、きっかけの子のことはいい想い出となって、閉ざされたところにある。

(それでいい)

とレイは思っていて、最上の選択だとも思っている。


 今、彼の目の前にヒビがいる。

 ヒビは、校舎横のコンクリートの段差に座っていて、学食後の昼休みを満喫しようとしていた。駄弁(だべ)ることで。

 そこで、レイはいつもなら横に並ぶが、

「後ろからギュってしていい?」

「え? え、まあ、いいけど」

 ヒビは混乱した。受け入れる姿勢にはなる。段差に体育座りで。レイは、

「よいしょ」

と後ろを陣取ると、

「じゃあ肩にあご、乗せるけどいい?」

「う、え、う、うん」

 足(もと)から、コンクリートの柱が、ヒビの力によって伸び、花のようになる。

(いやいや、慣れればどうってことない、恋人同士普通にすること)

 左の耳元で、レイの想いが音になる。

 レイ自身は、小さかった自分ではできないことを今やれていることで、なぜか、自分を救ったような気がしていた。


 ヒビは段々、彼の体温に慣れていった。不思議と安心する。コントロールがうまくいけば、コンクリートの花も消えた。

「昼ご飯おいしかったね、レイは何が一番好きだった?」

とヒビが聞くと、

「豚ステーキ」

「あら素敵」

「ヒビは? ヒビも言ってよ」

「んー、マッシュポテトかなー」

 ヒビがそう言って、より背中を預けると、ヒビの目の前に大きな氷が現れた。

「何、反撃?」

 レイはそう言って、その氷を消した。

「別にそういうワケでもないです」

「じゃあどういうワケ?」

「もっと密着してもいいよ、っていうか、こうしたかったんじゃないの? っていう。普通に座り直しただけだよ」

「そ、そう? ふうん」

 レイはそう言うと、首の裏を()いた。

 ヒビは、

「ふふ」

と、自然と()みをこぼしていた。

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