第4話
鈴岡レイの席の横を通らざるを得ない場合、石山ヒビはできるだけ冷静でいようとし、無表情に近くなる。だがそこに少々ぎこちなさがある。
(気付かれてない? いや気付かれてもいいのかもしれないけど)
ヒビがそう思って席に着くと、帰りのホームルームが始まった。
それさえも終わり、寮へと戻るという時、ヒビは見た。レイが8号棟の寮に入っていくのを。ただただじっくりと見た。
ヒビの部屋は10号棟の一室。寮は横に並んでいるので、割と近い。
と、知ったのだから何かに活かそう、とヒビは考えた。
(ちょっと散歩したら、あら偶然、ってならないかなあ、9号棟の横を通り過ぎて~みたいな)
ヒビは、できれば話しかけてきてほしいと思っている。
(あたしそういうとこあるもんなあ)
そう思いながらの寮への帰宅。
同じ寮に、同じクラスの樹妖種の上木ミナもいて、帰りがほぼ同時だった。
じっくりとレイを見ていた分、駆け寄ってからヒビは手をあげて、
「ねえミナ」
「何?」
並んで歩きながら。
「鈴岡レイくんいるでしょ」
「えっあたしの部屋にっ?」
「そうじゃないよ、そうじゃないよ絶対」
「あ、そうだよね、ごめん、何?」
「レ……レイって何が好きなのかなあ、とか思ってさ。その……ご趣味は? っていう」
「あー、レイのこと気になってるんだ、好きなんだね」
「えっと、や、まだわかんないよ、気に、なってる、けど」
「それはね、好きって感情なんだよ」
寮の一階の真ん中にある食堂めいた所を過ぎながら、こっそりとそう言われると、ヒビの胸元に何かが生まれるのをヒビ自身、感じた。
「話してみたら?」
「どうかな。でもどんな風に?」
「話すのが割と好きかもよ? そもそも」
「そっか」
「それにしてもよかったよね」
「え、何が?」
「レイのことが好きな子は多いけどまだ誰とも付き合ってないみたいよ」
(チャンス、というか危なかった)
ヒビは改めて、
(そうだね。好きだ、レイのこと)
そう思った。




