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元始種になっちゃったら氷結種に恋をした  作者: 阿川時定


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3/8

第3話

 石山(いしやま)ヒビは見た。鈴岡(すずおか)レイがつまずいて恥ずかしがるのを。

 もうヒビは、レイがどんな顔を見せようが、どんな姿勢でいようが、新しい一面を見たということで満足以上の感情を抱いてしまう。


 それは運動場から校舎へ戻る時だった。

 石の煉瓦(れんが)に対してヒビの魔導(まどう)種の力が暴走。石の花の(ごと)く、十数本の柱のようなものが立つ。


(ああもう、戻れ戻れ)

 またも、気持ちと操る力とを間違えないようにすべく、生やすことにも元に戻すことにも慣れていく。

 そんなことのための魔導の授業も、この魔導学園には存在する。


 樹妖(じゅよう)種の一人が、手や指を木の枝へと変えて花を幾つか咲かせ、

「やった、ここまでできたよ」

などという声を出した。最近ヒビにできた友人、上木(うえき)ミナだ。その手が元の状態に戻る。普通の手と指に完全に戻る。そういう種族。


 彼女と同じように、ヒビも魔導の力を使い、使う感覚を覚えていく。そして気持ちの変化の際に、その使()()()()が混ざらないようにしていく。


 自分で柱を、いわゆる突出部を、作るのは、今のヒビには難しいらしい。限界まで粘り、

「ぷはぁ」

と、力を使うのをやめた、その時点で、地面がそんなの盛り上がっていない。

(石や木の所じゃないからかなあ、でも多分違いそう)

 コンクリートの所で試してみる。と、

(うーん)

 それでもかなり小さい。


 これらの様子を見ていたミナが、

「ねえ、それって元始(げんし)種のだよね。でしょ?」

「あ、えーっと、うん。多分。てっきり魔導種って(くく)りなのかと思ってたけど」

「それは大きな括りだもんね。あたしたち全体が魔導種」

「じゃああれかな、ここに来る前にね、学校からの帰り道で、見たんだよね、なんか大喧嘩みたいなのを。危ないから無視して帰ろうとしたんだけど」

「何がどう関わってくるの? それ」


 ミナはそう言って運動場の端のコンクリートの階段に座った。

 その隣にヒビが座る。

 ヒビは思い出しつつ、

「それがさ、歩いてたら、焼けるように痛くて。急に。で、いつの間にか治ってたの。巻き込まれたみたいでさあ」

「ふうん……どうやって治ったんだろ、元始種がいた?」

「元始種っていうのは治せるの?」

「ああ、うん。そうだ、そうだよきっと。じゃあハーフみたいなものなのかもね。それで慣れ難いってことなのかも」

 ミナに言われて、ヒビは、

「ええ? 治し方、なかったのかなあ、ほかに。元始種かぁ……」

愚痴(ぐち)りつつも、

「え、じゃあ治った部分だけ魔導種……元始種ですよって? じゃあその分で難しいのかな」

「かも?」

 ミナが首を横に倒して半分同意すると、ヒビは、道が(ひら)けたような、それでいてその道がかなりの坂だと知ったような、そんな顔をした。


(もしかして、あの煉瓦(れんが)を別な感じの煉瓦に変化させるのもできるのかな……細胞が元に戻ったみたいに……)

 そのタイプの暴走も防がなければと、ヒビは意気込んだ。

 それからちらりとレイのほうを見た。


 レイは丸い氷の巨岩を目の前に生み出していた。高さは彼自身の身長の半分ほど。それを消すのも一苦労のようで、両手を向けて長いこと念じてから、呼吸を整えていた。


 そんなレイと目が合った。ヒビは、

(気のせい?)

と、目を()らした。手元でコンクリートが花を咲かせる。

(ああっもうっ)

 ヒビがそう思ってから、階段に咲いた無機質な花は、元の平らな面へと戻った。

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