第2話
目の前の席の男子の名前を、石山ヒビは人伝に知った。
鈴岡レイ。
彼は氷結種という種族らしい。
ヒビはこの魔導学園に来てから、様々な準備を整えた。着替えやら生活用品、勉強道具やら。だが、彼と話すタイミングだけは合わせることができずにいた。
なかなかきっかけがない。ならどうするか。
ヒビはどうして気になるのかということも考えた。
(あれかな、目が合った時に微笑んでくれたからかな)
レイの白髪は目立つ。ほかにも緑色や赤い髪の者もいるにはいるが、このクラス、1年A組では白髪はレイだけだ。
それだけではなく、レイは、まるで額縁に飾られたように美しく整っている。彼は高身長という部類にギリギリ入るくらいで太ってもいない。特徴は首から上に凝縮されている。
少なくともヒビにはそう見えるのだ。
(え、あの態度と見た目だけで? あたしチョロ過ぎない?)
ただ、考えてみれば、接点こそ席が前と後ろということしかないものの、様々なことがあったのだ。プリントをそっと後ろに回す気遣いをされたこと。特定のグループとの会話の際の笑顔。
(最初はちょっと気になっただけだったけど)
態度で気になる度合いが増した部分は大きい。と思い直せたことをヒビは喜んだ。
そんな風に考えている時だった。
(あっ)
レイの友人が、ノートと一緒に脇に挟んでいた筆箱を、ずり落としてしまった。廊下でのことだ。
「――っとぉ」
それをレイが見事に捕まえた。
「ありがと」
「あぁうん」
その、こんなの何でもない、という感が、またヒビには刺さった。
瞬間、教室のドアを開けたばかりの位置にヒビがいたせいか、ドアから木製の花が咲いた。
「ね、これ突然出てきたよ」
と、そばの女子に言われて気付いたヒビは、
(戻れ戻れ)
と、ドアに向けて念じ、そして――
戻せた。
戻せたら、ヒビはほっと一息吐いた。
移動先の教室から自分たちのクラスに戻ってきた時のことだった。ヒビも含め、皆が席に戻る。時間ギリギリまで自席から離れている者もいたが、レイはそうしなかった。
そして次は教室を移動しない。
当然、次の授業ではレイは目の前にいる訳で。
その背中が大きく感じる。
(やばい、本当に。刈り上げた所の上のサラヘアも何)
魔導種になってしまった自分の力に慣れなければならない中で、ヒビは想いを確かめた。机に木製の花が咲き、それがまた無い状態へと戻っていった。




