困らせるつもりは…
「っ……ぁ……!」
資源調達部の隊員の一人が、その場に膝をつく。
別の隊員も術式を維持できず、
魔法陣が掻き消えた。
食堂全体へ広がる重圧に、
誰もまともに呼吸できない――。
(や、ヤバいだろこれ……!)
翔の背筋に冷たいものが走る。
このままじゃ、本当に誰か倒れる。
「や、やめろって……!」
思わず声を張り上げる。
「もういいから!」
すると。
青年は、はっとしたように目を瞬かせた。
「……あれ」
次の瞬間。
食堂を支配していた重圧が、
一瞬で消え去った。
「――はっ!?」
「げほっ……!」
隊員たちが一斉に息を吐き出す。
ようやく、その場に息が戻った――。
青年は、どこか気まずそうに翔へ視線を向けた。
「……いや、その……。
マスターが嫌がるとは、
思ってなくて……。
困らせるつもりは
なかったんですけど……」
(いや、“つもり”の問題じゃねぇよ……!)
翔の胃が痛くなる。
資源調達部の隊長らしき男が、
額の汗を拭いながら進み出る。
「……攻撃を中止しろ」
低い声が、食堂に響く。
「全員、現状維持だ。
不用意に刺激するな」
隊員たちが緊張したまま武器を下ろしていく。
誰一人、
青年から目を逸らせない。
「本部へ連絡」
隊長が鋭く告げる。
「未確認の高位召喚体を確認。
対象を要監視対象として指定。
研究開発部・高城社員についても、
対象との高い関連性を確認。
同様に要監視対象として扱う」
周囲に、再びざわめきが広がる。
(……は?)
保護対象?
要監視対象?
(いや待て待て待て……!
なんでオレまで監視対象なんだよ……!?)




