今日の仕事は(4)
その後も二人は結晶の確認を続けながら、
ダンジョンの奥へと更に進んでいった。
翔がふと頭上へ目を向けると、
白い翼を広げたシエルが静かに飛んでいた。
「なあ、相沢」
翔はシエルを見上げながら声をあげた。
「シエルって、
ずっとああやって飛んでるけど何してるんだ?」
「索敵ですよ」
「索敵?」
相沢はタブレットを操作しながら答える。
「魔物がいないか確認したり、
周囲の魔力反応を探ったりしてます」
「なるほど」
「人間より高いところから見渡せますし、
視力もいいですからね」
するとシエルが大きく旋回をすると、
そのまま少し先の棚へ近づいていき空中で翼を大きく羽ばたかせながら滞空し始めた。
「……?」
翔が不思議に思っていると相沢が足を止める。
シエルは変わらずに棚の奥をじっと見つめ続けていた。
「どうかしたのか?」
「たぶん、何か見つけたようですね」
相沢がシエルの様子を見ながら答える。
「シエル、確認してきて下さい」
その声に応えるように、
シエルは棚の奥へ向かって飛んでいく。
しばらくするとシエルがこちらへ戻ってきた。
相沢の前で滞空すると、
一度だけ翼を大きく羽ばたかせる。
「……問題なかったみたいですね」
「分かるのか?」
「なんとなくですけど、
意思疎通はできますよ」
相沢がシエルへ視線を向ける。
「長く一緒にいると、
だいたい何を考えてるか分かるようになりますから」
その言葉が分かったのか、
シエルが相沢の隣へ静かに降り立った。
「……結構仲が良さそうなんだな」
「そうですか?」
「そう思うぞ?
シエルもちゃんと頑張ってるんだな」
そう言って翔が笑うと、
シエルは少しだけ胸を張るように姿勢を正した。
まるで、
褒められたことを分かっているようだった。
「……でもなんか、
ちょっとだけ生意気そうだな」
思わず翔が笑う。
そしてそんな翔を見て、
相沢も楽しそうに笑った。
「そういうところも含めて、いいやつですよ」
相沢がそう言って、
最後の結晶棚へ目を向ける。
「じゃあ、最後にあの棚を見て終わりましょうか」
「ああ」
そう答えて最後の結晶棚へ向かう。
シエルも頭上を旋回しながら、後を追ってきた。
結晶をチェックし終えたのを確認すると、
相沢がタブレットを閉じた。
「……今日のところは、これで終わりです」
「お疲れ……」
相沢が来た道を振り返る。
「じゃあ、向こう側に戻りましょうか」
「ああ」
そう言ってダンジョンの出口へ向かって歩き出した。
頭上では、
シエルが静かに翼を広げていた。




