今日の仕事は(3)
相沢がいつもの笑顔を見せたあと、
二人は再び結晶棚へ向き直った。
先ほどまでの戦闘が嘘だったかのように、
仕事は何事もなかったように続いていく。
しばらくして、ふと相沢の右手へ目を向けた。
人差し指に嵌められた先ほどの指輪。
「そういえば、さっきの魔法ってさ」
「はい?」
「すごくファンタジーって感じだったけど、
一体どうやったんだ?」
「ああ、あれですか!」
相沢が右手を軽く持ち上げる。
「東和製の魔道具を使った人工魔術ですよ」
「……え、でも」
翔は指輪を見つめる。
「ああいう攻撃用の魔道具って、
研究開発部では扱ったことなんて……」
「そりゃそうですよ」
相沢が笑う。
「だって、あれは資源調達部で独自に開発したものなんですから」
「資源調達部でか……!?」
「はい!」
相沢は結晶の状態を確認しながら答える。
「実は、研究開発部で確立された魔力関係の技術を応用して現場でも使えるように調整したんです」
「そうだったのか……」
翔は改めて指輪を見る。
「……オレ達が研究したものが、
こんな所でこっそりと……」
「ハハハ、バレちゃいましたね!」
相沢が笑いながら指輪の表面を指先でなぞる。
「研究開発部は異界技術の仕組みを調べてから社会に向けての製品開発をしてましたけど、
資源調達部もそれを使って現場の戦闘でも使えるように、独自の研究をしてたんです」
「へえ……」
どうやら研究開発部を離れてからも、
知らないところで技術が発展し続けていたらしい。
「ちなみに、これって」
翔が指輪を指差す。
「どういう仕組みなんだ?」
「この飾りの魔石に魔力を溜めて、
周りの彫金回路で詠唱の再現をしています」
「……なんだかデザイン含めてお洒落なんだよな。
でもやってる仕組みは変わらないみたいだし……」
「そうなんです。
あと、これは炎弾の回路しか彫られてないので炎弾専用の指輪って感じですね!」
「なるほどな」
翔は結晶を棚へ戻しながら、
指輪をもう一度見る。
「……ってことは、
魔法の種類は回路で決まって、
魔力の量は魔石次第ってことか?」
「そういうことです!」
「そしたら、今よりデカい魔石をつけたらもっと強い魔法が撃てるってことか!」
「実はそうなんですよ!」
相沢が少し嬉しそうに笑った。
「まあ、
まだ研究段階らしいんですけどね……。」
そんな話をしながら、
二人は次の結晶棚へ進んでいった。




