↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
45/48

今日の仕事は(2)


 結晶棚の一つ一つをチェックしながら奥へと進んでいく――。


 そのまましばらくすると棚の突き当たりまで進んだようで、前方の棚が視界を遮り、その先が見えなくなってしまった。


 ふと、相沢が足を止める。


「……」


 何かに気付いたように、

 棚の向こうへ視線を向けていた。


「どうしたんだ?」


「……先輩」


 相沢が手を上げる。


「ちょっと待ってください」


 そう言って慎重に棚の横へ回り込んでいくと、

 その棚の影には一匹の魔物が佇んでいた――。


 二足で立つ、犬に似た魔物。


 こちらの姿を確認すると、

 魔物は低く唸りながら身構えた。


「な、なんだよそいつ……!」


「……コボルトですね」


 相沢は落ち着いた様子で答えた。


「低層では珍しくない魔物です」


 そう言いながら、翔の前へ出る。


「先輩は少し下がってください」


「……分かった」


 翔が一歩下がったのを確認すると、

 相沢はコボルトとの距離を測るようにじっとその動きを見つめた。


「シエル」


 相沢が静かに名前を呼ぶ。


 すると、足元に淡い光が集まり円形の魔法陣がゆっくりと展開し始めた。


 魔法陣から風が巻き上がり、

 その中心からは、白い翼を大きく羽ばたかせながら鷹のような召喚獣が姿を現した――。


 召喚獣は空中で一度だけ翼を広げると、

 相沢の前へと静かに降り立った。


「……シエル、お願いします」


 相沢の声に応えるように、

 シエルがコボルトへ視線を向ける。


 と、同時にコボルトが地面を蹴った。

 低い姿勢のまま一気に距離を詰めてくる。


「シエル、上へ避けて下さい!」


 相沢の指示にシエルが素早く翼を広げる。


 コボルトの爪が白い羽根をかすめたが、

 シエルはそのままコボルトの頭上へと舞い上がった。


「そのまま、突風!」


 相沢が短く指示を出すと、

 シエルは翼を大きく振り始める。


 次の瞬間、強い風が巻き起こった。


「ギギィ……!」


 風に煽られコボルトの身体がよろめく――。


 その隙を逃さずシエルが急降下すると、

 鋭い爪がコボルトの肩を捉え、そのまま地面へ押さえつけてしまった。


 コボルトは抵抗しようと身を捩るが、

 シエルの爪から逃れることができないようだ。


 その様子を確認しながら、

 相沢がゆっくりと右手をコボルトへ向けた。

 人差し指には小さな魔道具の指輪が嵌められている。


「――炎弾」


 相沢がそう呟くと、指輪が淡い赤色に光ったような気がした――。


 すると光は大きくなり、かざした手の前に小さな魔法陣が浮かび上がり始める。

 魔法陣の中心へは炎が集まり、一瞬で小さな炎の弾へと形を変えていった。


「――発射!」


 次の瞬間、

 魔法陣から放たれた炎弾がコボルトへ真っ直ぐ飛んでいく。


 炎弾はコボルトへ直撃し、その身体を炎が包み込む――。


「ギィッ……!」


 短い鳴き声を上げると、

 コボルトは力なくその場に倒れこんだ。


 相沢はしばらく様子を確認してから、

 ゆっくりと右手を下ろした。


「……終わりです」


 シエルも役目を終えたように相沢の横へ戻ってくる。


「……強いな」


 思わず口から出た。


「このくらいなら、

 たいしたことないですよ」


 相沢は何でもないことのように答える。


「……それじゃあ、先輩」


 相沢がタブレットを手に取る。


「続きをやりましょうか!」


「……切り替え早いな」


「まあ、仕事ですから!」


 そう言って、

 相沢はいつもの笑顔を見せた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。