今日の仕事は(5)
ゲートを抜けると、
先ほどまでの洞窟の景色が
見慣れた施設の景色へと変わっていった。
いつもの世界へ戻ってきたことに少し安心すると、
翔はふと隣を歩くリオンへと目を向けた。
「なあ、リオン」
「はい、マスター」
「そういえばなんだけど、
今日はやけに静かじゃなかったか……?」
リオンが少しだけ首を傾げる。
「そうですか?」
「ああ。
あんまり声を聞かなかったような気がする」
「……そうですね」
リオンは少し考えるように前を向く。
「今日はマスターが仕事に集中されてましたので、
邪魔をしない方がいいかと思いまして」
「ええ……、そんな気を使わなくても……」
翔は少し申し訳なさそうな顔をした。
「それに……」
リオンが少し前を歩く相沢へ目を向ける。
「今日はオレも色々と、
勉強をさせて頂きましたので」
「勉強?」
「ええ。
相沢さんのお話がなかなか興味深かったので
聞き入ってしまいました」
「魔道具についてとかか?」
「そうですね。
あとは魔石の使い方や、
こちらでの異界資源の扱い方についてでしょうか」
リオンは少し楽しそうに続ける。
「特に人工魔術はおもしろそうでしたね」
「……それはオレも思った」
翔も少し楽しそうに笑った。
「ですので今日は、
オレにとってもなかなか勉強になる一日でした」
「そういうことか……」
そう言って笑う翔が前へ視線を戻すと、
相沢がタブレットを操作をしながら歩いていた。
そして、
その周りをシエルがゆっくりと旋回している――。
「……そういえばさ」
翔がシエルへ目を向ける。
「シエルはこれからどうするんだ?」
「ああ」
相沢が頭上を見上げる。
「もう今日は終わりですから、
あちら側に戻ってもらいます」
そう言って相沢が足を止めると、
シエルも空中で旋回を止めた。
「シエル、今日もありがとうございました」
その声に応えるように、
シエルの身体が淡い光に包み込まれていく。
白い翼が光の中へ溶けるように消えていき、
やがてその姿も完全に見えなくなった。
「……帰ったのか?」
「はい。
必要な時に呼べば、また来てくれますよ」
「へえ……」
翔がシエルの消えた空間を見つめていると、
相沢がタブレットを差し出してきた。
「あ、先輩」
「ん?」
「今日の作業記録、最後にサインお願いします」
「ああ、分かった」
翔はタブレットを受け取り、
表示された記録を確認する。
そして問題がないことを確認してから、
画面へサインを書き込んだ。
「これで大丈夫か?」
「はい」
相沢はタブレットを受け取り、
記録を保存する。
「よし。これで今日の分は終わりです!」
相沢がタブレットを閉じる。
「じゃあ、俺もここで失礼させて貰いますね!
先輩、リオンさん。お疲れ様でした!」
「ああ、相沢もお疲れ……!」
相沢を見送ってから、
二人もゆっくりと歩き始める。
「……今日の晩飯、どうするかな」
「何か食べたいものでもありますか?」
「うーん……」
翔は少し考える。
「思い付かないし、
帰りにスーパーで何か買って帰るか!」
「それもいいですね」
そんな話をしながら、
二人は異界資源開発センターの出口へ向かって歩いていった。




