お久しぶりです
木曜日
今日もいつも通り、
異界資源開発センターへ出勤すると。
「おう、高城」
黒岩部長に別室へ呼び出されてしまった。
「今日からしばらくは、
二人一組で動いてもらおうと思ってな」
「二人でですか?」
「ああ、これからは連携も必要になってくるからな」
そう言って、
黒岩部長が振り返って扉へ視線を向ける。
「入れ」
「失礼します」
聞き覚えのある声につられて、
扉へと視線を向ける。
「……あ」
すると、見覚えのある青年が入ってきた。
何年か前に、
開発部へジョブローテーション研修で来ていた後輩だ。
だけど、どうしよう……。
名前が出てこない。
「お久しぶりです、先輩」
「……ああ、久しぶりだな」
そう、当たり障りのない返事をしながら。
頭の中では必死に名前を探していた。
顔は分かるし、
教育担当だったことも覚えている。
なんなら、人柄だって覚えてる。
だけど、
肝心の名前だけが出てこない。
「いやあ、調達部に居たなんて知らなかったな……」
とりあえず、会話を繋いでなんとかヒントを得なければ……。
そう思って口を開こうとすると。
青年が急に苦笑しはじめた。
「先輩、相沢ですよ」
「……、ああ!」
思わず声が出てしまった。
「……あれから元気にしてたか、相沢」
「今、名前出てきませんでしたよね?」
「…………」
「図星ですか」
「……ゴメンって」
申し訳なくなって謝ると、
相沢が肩を揺らして笑いだした。
「先輩のことだからそんなことだろうなって思ってましたよ」
そして、視線を合わせながら微笑んだ。
「まあ名前以外は覚えててくれたみたいなんで、
今回は許してあげます」
「……なんか偉そうだな」
そう言って笑ってしまうと。
「だって、今はオレの方が先輩なんで」
相沢はそう言って少し得意そうに胸を張る。
「……そうなのか?」
どうやら、
探索部には相沢の方が一年近く早く来ていたらしかった。
「ということで」
相沢が嬉しそうに笑う。
「今日から、
オレが先輩の教育係なんで!」
「……優しくお願いしますよ、相沢先輩?」
「……なんか落ち着かないんで。
やっぱりいつも通りにして貰っていいですか?」
何故かお願いをされてしまった。
そんな様子に黒岩部長が肩を揺らす。
「高城」
「はい」
「こいつ、口は生意気だし態度も悪いが」
「……聞こえてるんですけど?」
「聞かせてんだ」
「……まあ、腕だけは探索部でも指折りだ」
その言葉に、
相沢は少しだけ照れ臭そうに頭を掻いた。
「そういうことだから、高城」
黒岩部長が翔を見る。
「こいつには、遠慮なく何でも聞いてやってくれ」
「はい」
昔は、後ろを付いてきた後輩だったのに。
それが今では、自分の教育係になっている。
なんだか、少しだけ不思議な気分だった。




