得意なこと
◇
「今日は管理の仕方を覚えて貰う」
朝一番。
ダンジョンへ到着するなり、
黒岩部長がそう言った。
「管理ですか?」
「コイツらも勝手に生えてる訳じゃないからな」
そう言って、結晶棚の並ぶ区画を指差す。
様々な色に輝く結晶が整然と並び、
それぞれに管理番号と、
記録用の電子端末が設置されていた。
「結晶の保有魔力濃度。
パイプラインの魔力供給量。
それから、結晶の成長速度。
この辺りを確認して回る」
「しっかり、生産管理されてたんですね」
黒岩部長が笑う。
「こういう仕事も必要ってわけだ」
「ちょっと安心しました」
自分に出来そうな仕事も見つかり、
かなり安心した。
◇
管理作業自体は難しくなかった。
表示された数値を確認し、
状態をタブレット端末へ記録していく。
黙々と作業を進めていると。
「……ん?」
途中で、違和感を覚えた。
記録した数値を再度チェックしていく。
「どうした?」
黒岩部長が声を掛けてくる。
「その……」
端末の数値を指差しながら。
「この区画だけ、
魔力供給量が少し落ちてませんか?」
「ん?」
黒岩部長が端末を覗き込む。
「誤差じゃねえのか?」
「……どうでしょう」
少し考える。
「一つだけなら誤差だと思いますけど……」
画面を指差した。
「三日前から、
この区画全体で同じ傾向が続いてます」
「……ほう」
「だとすると……」
配管へ視線を向けた。
「供給量が落ちてるのが、
このラインだけなんです……。
なので、この先に原因があるのかもしれません」
「配管の劣化か?」
「それか詰まりが起きてるのかなと」
しばらく沈黙、そして。
「確認してくるから待ってろ」
黒岩部長が歩き出した。
◇
十分後。
戻ってきた黒岩部長が、苦笑していた。
「当たりだった」
「え?」
「配管内に、結晶片が引っ掛かってた」
思わず、目を瞬かせる。
「本当にですか?」
「本当だ」
黒岩部長が肩を竦める。
「完全な閉塞じゃなかったからな。
誰も気付いてなかった」
「……詰まる前に見つかってよかったです」
「数字から推測出来るとはやるじゃないか」
そう言って黒岩部長が笑う。
「お前、やっぱり技術畑出身だわ」
その言葉に、
少しだけ胸の奥が軽くなる。
この部署でも、
自分に出来ることはあるのかもしれない。
隣を見ると、
リオンが少しだけ嬉しそうに笑っていた。
その顔を見ていたら、
なんだか少し照れ臭くなってしまった。
でも、不思議と悪い気はしなかった。




