はじめてのダンジョン(3)
黒岩部長が、呆れたように頭を掻く。
「……強いのは分かったがな」
そう言いながら、リオンを見る。
「高城があんな訳の分からん魔法、
使えるわけがないだろ……」
「え?」
「もっと『ここが弱点ですよ』みたいに、
分かりやすく倒せ。
高城の教育にならんだろ」
リオンが、少しだけ目を丸くした。
「……なるほど」
少しだけ考えて、
真面目な顔で頷く。
そんなリオンに対して、
黒岩部長が軽く肩を竦めた。
「なんなら高城に教えるつもりで、
一緒に討伐してくれても構わんからな」
「たしかに、その方が良さそうですね」
いやいや、ちょっと待てよ……。
討伐の教育なんて御免だからな……!
「リ、リオン……。
オレのことは気にしないで、
どんどん倒してくれていいんだからな……」
急に焦りだした翔の様子に、
リオンが少しだけ困った顔をする。
「……それは、難しいですね」
「え?」
「マスターには、
これから色々と覚えて貰わないと
いけなさそうですし……」
「そんな……!」
「でも、
危なそうならすぐ助けますから。
……だから、そんな顔しないで下さいね?」
そんなやり取りに黒岩部長が少し笑い始める。
「しっかりダメが言えるなんて、
リオンもなかなか物分かりが良くなって
きたじゃないか」
そう言った部長は、
なんだか楽しそうだった。
◇
そんな話をしながらしばらく進むと、
急に視界が開け始めた。
「……広い」
洞窟の中とは思えないほどに、
整備された空間が広がっていた。
歩きやすく整備された空間には、
金属棚がずらりと並んでいる。
その中には、色とりどりの結晶。
赤、青、透き通ったもの。
ぼんやりと、光を帯びたものまである。
そしてそれぞれの結晶には、
何かの配管が繋がっていた。
一定間隔で淡い光が流れている。
「……何ですか、あれ」
なんというかダンジョンというよりも、
何かの製造工場のようだった。
「ここが、低層の資源管理区画だ」
黒岩部長が言う。
「低層は、
こういう素材の培養と回収がメインだ。
ゲームみたいなドキドキの大冒険ばかりが
仕事じゃないってことだな」
「……なんか。
ファンタジー感が急になくなった気がします」
黒岩部長がニヤリと笑う。
「夢、壊れたか?」
「……結構。壊れたかもしれないです」
そう言って、翔が管理区画を眺めていると。
「まあ、そんなガッカリすんな」
「え?」
「すぐにとは言わねえが、
まだ、お楽しみは残してあるからな」
そう言って楽しそうにしている黒岩部長に、
翔は、何か嫌な予感がよぎった気がした。




