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はじめてのダンジョン(1)

【東和重工 異界資源開発センター前】


「……本当に、来てしまった……」


 思わず、呟く。


 目の前には巨大な施設。

 無機質な外壁に、大型搬入口。


 まるで工場か、研究施設みたいだ――。


「おう、来たか」


 振り向くと。

 黒岩部長が、軽く手を挙げた。


「顔、死んでるぞ」


「……緊張して、あんま寝れなくて」


「遠足前の小学生か」


「……遠足みたいに楽しい理由なら、

 良かったんですけどね……」


 そんな翔の様子に、

 黒岩部長が苦笑する。


 翔はふと、隣のリオンを見る。


「……それで。

 なんでお前はそんな楽しそうなんだよ」


「折角ですし。

 マスターの召喚獣らしく、

 活躍しときたいなと思いまして」


「……普通で良いからな?」


「ハハ。

 まあ、安心しろ。

 今日は低層だからな。

 慣らしみたいなもんだと思っておけ」



【センター内部】


 認証ゲートへ社員証をかざし、

 そのまま内部へ進んでいく。


 通路の脇には、

 電子パネル。

 認証ランプ。

 立入制限区域の表示。


 思っていたより、

 ずっと会社らしい雰囲気だった。


 しかし、

 行き交う社員たちの雰囲気は違っていた。


 防護装備。

 武器ケース。

 中位の召喚獣を連れた社員も珍しくない。


「今日、魔物少ねえといいな」

「朝から戦闘とか勘弁だもんな」


 そんな会話が聞こえてきた。


 どうやら自分が来た場所は。

 やはり、普通じゃないらしかった。



【センター内 ダンジョン入口前】


「こっちだ」


 黒岩部長に続き、さらに奥へ進む。


 重い隔壁。

 厳重な警備。


 その先に、巨大なゲートがあった。


「……これ、本当に入るんですか?」


「当たり前だろ」


 黒岩部長が、当然とばかりに言う。


「まあ、

 まだそんなに緊張しなくても大丈夫だ」


 隣にいたリオンも、

 少しだけ距離を縮めてきた。


「そうですよ。

 オレも、ついてますから」


「……うん」


 なんだか、

 少しだけ安心したような気がした。



【ダンジョン内部 低層一階】


 巨大なゲートが開くとその先には、

 洞窟型のダンジョンが広がっていた。


 内部へ一歩足を踏み入れると、

 周囲の空気が変わったのが分かった。


 少し冷たい、湿った空気。


 思わず、肩が強張るが。


「……あれ?」


 想像していた景色と違っていた。


 足場は整備されている。

 足元も照明で照らされている。

 安全柵に、番号の振られた標識。


 想像していたような、

 未開の異世界ではなかった。


 それよりもどこか、

 管理された現場に近い気がした。


「低層は、かなり整備されてるからな」


 黒岩部長が言う。


「新人研修もここがメインだ。

 資源回収の練習にも丁度いいしな」


「資源回収……?」


「魔物倒すだけが仕事じゃねえ。

 うちの本業は、そっちだからな。

 まあ、先の広間に行けば分かるさ」


「……思っていたより。

 ちゃんと現実的な仕事なんですね」


「何だと思ってたんだ?」


「命懸けの冒険、ですかね……?」


「まあ。半分は正解だな」


 黒岩部長が笑う。


 その時。

 奥の暗がりが、小さく動いた。


 リオンの耳がぴくりと動く。


「……いますね」

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