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辞令からは逃げられない(3)


「まあ、そんな訳で」


 黒岩部長が、扉を開ける。


「取り敢えず。

 部署案内でも始めるか」


「お願いします……」


 そう言って。

 カケルは、慌てて後を追う。


 そしてリオンも。

 どこか嬉しそうに。

 ぴたりと、その後ろをついてきた。



 資源調達部フロア。


 社員たちが、慌ただしく動いている。


 書類を抱える者。


 装備を確認する者。


 魔物討伐について、

 打ち合わせをする者もいる。


 ここが本当に戦う部署なのだと。

 少しだけ、実感が湧いてきた。


「あ。部長」


 通りがかった男が、軽く会釈する。


「彼らが例の新人ですか?」


「おう。今日からだ」


 黒岩部長がこちらを見る。


「研究開発部から異動してきた。

 高城と――」


 リオンを見る。


「高城の召喚獣のリオンだ」


 その瞬間。

 周囲の視線が、リオンへ集まった。


「……あの噂の?」


「高位召喚獣って、本当だったのか」


「テレビでしか見たことねえ……」


 社員たちが、ちらちらとこちらを見る。


 その視線に。

 リオンが少しだけ、

 困ったように耳を動かす。


「おいおい、珍しいのは分かるが。

 あんま見るな……」


 黒岩部長が、苦笑する。


「まあ。

 そのうち、パーティも組むことになる。

 楽しみにしとけ」


 そう言って、黒岩部長が歩き出す。


「中位までの召喚獣持ちはそこそこいるが。

 高位は珍しいからな。

 やっぱり、気になるんだろ」


 そんなやり取りをしながら、

 フロアを回る。


 探索準備室。


 資材管理室。


 簡易医療室。


 見慣れない設備が並んでいる。


「まあ。

 細かい内容はそのうち覚えろ」


 黒岩部長が、軽く肩を竦める。


「取り敢えず。

 明日からダンジョンへ潜ってもらうからな」


「……え?」


「低層ダンジョンだ。

 最初の慣らし。

 危険は少ねえから安心しろ」


 さらっと言われる。


 しかし。


「……あの。

 研修とかは……?」


 黒岩部長が少しだけ怪訝そうな顔をする。


「入社の時に。

 全体研修、受けただろ?」


「……いや。受けましたけど」


「なら。後は現地で覚えろ」


 頭が。


 真っ白になる。


「……いや。待って下さい。

 そんな急に言われても……」


 黒岩部長が少し笑う。


「安心しろ。最初はオレも付く」


「……いや。その。

 心の準備が……」


 隣からリオンが、

 少しだけ張り切った顔を向けてきた。


「頑張りましょうね。マスター」


「……えぇ……」

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