辞令からは逃げられない(3)
「まあ、そんな訳で」
黒岩部長が、扉を開ける。
「取り敢えず。
部署案内でも始めるか」
「お願いします……」
そう言って。
カケルは、慌てて後を追う。
そしてリオンも。
どこか嬉しそうに。
ぴたりと、その後ろをついてきた。
◇
資源調達部フロア。
社員たちが、慌ただしく動いている。
書類を抱える者。
装備を確認する者。
魔物討伐について、
打ち合わせをする者もいる。
ここが本当に戦う部署なのだと。
少しだけ、実感が湧いてきた。
「あ。部長」
通りがかった男が、軽く会釈する。
「彼らが例の新人ですか?」
「おう。今日からだ」
黒岩部長がこちらを見る。
「研究開発部から異動してきた。
高城と――」
リオンを見る。
「高城の召喚獣のリオンだ」
その瞬間。
周囲の視線が、リオンへ集まった。
「……あの噂の?」
「高位召喚獣って、本当だったのか」
「テレビでしか見たことねえ……」
社員たちが、ちらちらとこちらを見る。
その視線に。
リオンが少しだけ、
困ったように耳を動かす。
「おいおい、珍しいのは分かるが。
あんま見るな……」
黒岩部長が、苦笑する。
「まあ。
そのうち、パーティも組むことになる。
楽しみにしとけ」
そう言って、黒岩部長が歩き出す。
「中位までの召喚獣持ちはそこそこいるが。
高位は珍しいからな。
やっぱり、気になるんだろ」
そんなやり取りをしながら、
フロアを回る。
探索準備室。
資材管理室。
簡易医療室。
見慣れない設備が並んでいる。
「まあ。
細かい内容はそのうち覚えろ」
黒岩部長が、軽く肩を竦める。
「取り敢えず。
明日からダンジョンへ潜ってもらうからな」
「……え?」
「低層ダンジョンだ。
最初の慣らし。
危険は少ねえから安心しろ」
さらっと言われる。
しかし。
「……あの。
研修とかは……?」
黒岩部長が少しだけ怪訝そうな顔をする。
「入社の時に。
全体研修、受けただろ?」
「……いや。受けましたけど」
「なら。後は現地で覚えろ」
頭が。
真っ白になる。
「……いや。待って下さい。
そんな急に言われても……」
黒岩部長が少し笑う。
「安心しろ。最初はオレも付く」
「……いや。その。
心の準備が……」
隣からリオンが、
少しだけ張り切った顔を向けてきた。
「頑張りましょうね。マスター」
「……えぇ……」




