辞令からは逃げられない(2)
資源調達部 部長室
「――お。来たか」
部屋へ入った瞬間。
聞き覚えのある声に、思わず足が止まる。
「……あ」
机の向こう。
そこにいたのは。
召喚初日。
事情聴取でリーダーをしていた。
あの白髪混じりの男だった。
「そんな警戒すんな。
あの時は、緊急事態だったからな。
正直、こっちも余裕なかったんだ」
男が、
少しだけ苦笑する。
「……あの時の」
「おう、改めて。
資源調達部部長、黒岩だ。
よろしくな」
事情聴取の時とは、別人みたいだ。
「……高城です。
よろしくお願いします」
まだ少しだけ、
頭が追いついていない。
とりあえず、反射で挨拶だけする。
「ハハ。
まあ、急な異動だ。
固まるのも分かる」
黒岩部長が軽く笑う。
「召喚獣付きって時点で、
人手としても大歓迎だ」
そう言って黒岩部長が、
今度はリオンへ視線を移す。
「リオンも。
改めて、よろしくな」
リオンが、少し姿勢を正す。
「……はい。
よろしくお願いします」
「ハハ。
事情聴取の時より、
ずいぶん落ち着いてるな」
「……あの時は、色々ありましたので」
少しだけ、困ったように笑う。
「まあ。
資源調達部って言っても、
要はダンジョン部署だ」
「危険手当もあるし。
召喚獣側にも給料が出る。
基本は成果制だからな。
持ち帰った資源や実績次第では、
結構変わるぞ」
そう言って、黒岩部長がニヤリと笑う。
「つまり。
リオンが頑張れば、
それだけ高城の生活も豊かになるって訳だ」
ぴくり。
リオンの耳が、小さく動く。
「……オレが、頑張れば」
一拍。
「マスターに、良い暮らしを……」
その様子に、黒岩部長が笑う。
「ハハ!
そういうことだ」
その瞬間。
リオンの目が、小さく輝いた。
少しだけ、身を乗り出し。
「……分かりました。
オレ、頑張ります。
よろしくお願いします」
「おう。期待してるぞ」
「いや。
勝手にやる気出して話進めるなよ……」
思わず小さく呟く。
隣では。
リオンが、
なんだか少しだけ。
張り切っているようだった。




