辞令からは逃げられない(1)
◇
『辞令』
高城 翔
令和○年○月○日付をもって。
研究開発部から。
資源調達部勤務を命ずる。
東和重工株式会社
代表取締役社長
東堂 正宗
◇
「……は?」
目の前の紙をもう一度見る。
『資源調達部勤務を命ずる』
意味が分からない。
いや、分かる。
分かるけど……。
「……え?」
頭が追いつかない。
目の前では、
佐伯部長が何かを話しているが――。
「――という訳で。
召喚獣運用の関係もあってな。
急ではあるが、今日付で異動だ」
「資源調達部は、
今ちょうど人手不足で――」
何も、頭に入ってこない。
研究開発部。
異動。
資源調達部。
召喚獣。
単語だけが、
頭の中をぐるぐる回っていた。
そんな翔の様子に、
リオンが顔を覗き込む。
「……マスター?」
佐伯部長も、
リオンの動きにつられて翔を見る。
「……高城?、聞いてるか?」
そんな問いに、
少しだけ意識が戻された。
「え…。あ、はい……」
「まあ。
急で驚くのは分かるが……」
佐伯部長が、
少し困ったように頭を掻いた。
「取り敢えず。
詳しい説明は向こうでもある。
まずは資源調達部へ顔を出してこい」
その言葉に、
リオンは隣のカケルを見る。
しかし、まだ固まったままだった――。
小さく頷き。
「……分かりました。
では、オレが連れて行きます」
「……ああ、高城を頼むよ」
そんなリオンの反応に、
佐伯部長は苦笑する。
「……マスター」
肩を軽く押される。
「行きましょう」
「……え。うん」
多分、
まだ半分も理解出来ていないのだろう。
そんな様子を見て、
リオンは少しだけ笑ってしまった。
◇
研究開発部のフロアを進む。
見慣れた白衣姿に、
静かな空気。
それらが途切れ、
エレベーターを降りた先。
フロアの空気がガラリと変わった。
聞こえてくるのは機材の作動音。
壁際には、
見慣れない器具や装備が並び。
社員たちは、
動きやすそうな制服に、
防護装備を合わせていた。
研究開発部とは、明らかに違う。
どこか。
張り詰めた空気が漂っている。
「……なんか。
開発部と全然違うんだけど」




