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辞令からは逃げられない(1)


『辞令』


 高城 翔


 令和○年○月○日付をもって。


 研究開発部から。


 資源調達部勤務を命ずる。


 東和重工株式会社


      代表取締役社長


           東堂 正宗



「……は?」


 目の前の紙をもう一度見る。


『資源調達部勤務を命ずる』


 意味が分からない。


 いや、分かる。

 分かるけど……。


「……え?」


 頭が追いつかない。


 目の前では、

 佐伯部長が何かを話しているが――。


「――という訳で。

 召喚獣運用の関係もあってな。

 急ではあるが、今日付で異動だ」


「資源調達部は、

 今ちょうど人手不足で――」


 何も、頭に入ってこない。


 研究開発部。


 異動。


 資源調達部。


 召喚獣。


 単語だけが、

 頭の中をぐるぐる回っていた。


 そんな翔の様子に、

 リオンが顔を覗き込む。


「……マスター?」


 佐伯部長も、

 リオンの動きにつられて翔を見る。


「……高城?、聞いてるか?」


 そんな問いに、

 少しだけ意識が戻された。


「え…。あ、はい……」


「まあ。

 急で驚くのは分かるが……」


 佐伯部長が、

 少し困ったように頭を掻いた。


「取り敢えず。

 詳しい説明は向こうでもある。

 まずは資源調達部へ顔を出してこい」


 その言葉に、

 リオンは隣のカケルを見る。


 しかし、まだ固まったままだった――。


 小さく頷き。


「……分かりました。

 では、オレが連れて行きます」


「……ああ、高城を頼むよ」


 そんなリオンの反応に、

 佐伯部長は苦笑する。


「……マスター」


 肩を軽く押される。


「行きましょう」


「……え。うん」


 多分、

 まだ半分も理解出来ていないのだろう。

 そんな様子を見て、

 リオンは少しだけ笑ってしまった。



 研究開発部のフロアを進む。


 見慣れた白衣姿に、

 静かな空気。


 それらが途切れ、

 エレベーターを降りた先。


 フロアの空気がガラリと変わった。


 聞こえてくるのは機材の作動音。


 壁際には、

 見慣れない器具や装備が並び。

 社員たちは、

 動きやすそうな制服に、

 防護装備を合わせていた。


 研究開発部とは、明らかに違う。


 どこか。

 張り詰めた空気が漂っている。


「……なんか。

 開発部と全然違うんだけど」

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