焼きそばの威力
食後。
ソファへ腰を下ろし、
翔は軽く息を吐いた。
「食ったな……」
思ったより、
食べすぎてしまったらしい。
向かいでは。
リオンが、
食べ終えた皿を重ね始めている。
「片付けは、オレがやりますので」
「え、いいのか?」
「はい。
なので、マスターは先にお風呂どうぞ」
「……お前って、結構ちゃんとしてるんだな」
「そうですか?」
「ああ。
もっと適当でも良いからな?」
「でも、
マスターは放っておくと
少し危なそうですし……」
「どういうことだそれ?」
少し笑いながら。
「まあいいや。
そしたら、頼むな」
「はい」
◇
入浴を終え、
髪を軽く拭きながらリビングへ向かう。
リビングの扉を開くと、
リオンがソファへ座ってテレビを見ていた。
「お、片付けありがとな」
「いえ。
ちょうどさっき終わったとこなので」
「助かる」
そのまま。
リオンの隣へ腰を下ろし、
一緒にテレビを見始める。
ふと。
視界の端で、
リオンの尻尾が揺れる――。
「……ん?」
何か、匂う。
「……どうしました?」
「いや、なんだろうな……?」
何気なく。
翔は匂いを確かめるように、
揺れる尻尾の先を軽く掴む。
「――っ」
ぴたり。
リオンの動きが止まった。
「マ、マスター?」
尻尾を少し引き寄せると、
ふわりと鼻先へ匂いが届く。
「あ」
「どうしました?」
「お前、焼きそばになってる」
「…………」
数秒。
リオンが、
恐る恐る尻尾へ顔を寄せる。
「……本当です」
ぺたりと、耳が下がる。
なんだかその様子がおかしくて、
翔はつい笑ってしまった。
「完全に焼きそばだな」
まだ少し、笑っている。
その様子を見て。
「なんか、嬉しそうですね……」
「いや、悪い悪い」
尻尾をカケルの手から回収しながら。
「……オレも、お風呂入ってきます」
「おう」
「マスターは、先に寝ていてください」
「ん。
まあ、ほどほどにな?」
少しだけ、口元が緩む。
「……はい」
そして。
廊下へ向かう前に、
小さく振り返る。
「おやすみなさい、マスター」
「ああ、おやすみ」




