料理をしよう(3)
リビングのテーブルへ皿を運ぶ。
少しだけ形の崩れた焼きそばから、
甘辛い匂いが湯気と一緒に広がっていた。
向かいには、
リオンが姿勢よく座っている――。
翔が、軽く手を合わせる。
「いただきます」
一拍遅れて
リオンもどこか真面目な顔で頭を下げた。
「……いただきます」
「そんな、
ちゃんとしなくてもいいのに」
「……でも。
マスターがやっていたので」
妙に真面目な顔をされてしまい、
思わず笑ってしまった。
「まあ、食べようか」
「はい」
リオンが、焼きそばへ箸を伸ばす。
その様子を、
翔はなんとなく眺めていた――。
「……どうだ?」
少しだけ間が空く。
「……味、濃いです」
「もしかして……、濃すぎたか?」
「……でも」
少し考えてもう一口、
確かめるように咀嚼して。
わずかに、目を丸くする。
「……おいしいです」
「そっか」
少しだけ、肩の力が抜けた。
「まあ、ジャンキーだけどな」
「じゃんきー……って、なんです?」
「味濃くて、体に悪そうなやつ」
少し考えて、
リオンが焼きそばを見る。
「確かに。
マスターが好きそうな味です」
「うるさい」
即答だった。
その返しが少し面白かったのか、
リオンの口元がまた緩む。
そして、
焼きそばへもう一度箸を伸ばした。
少し間を置いて。
「……でも、
オレも好きかもしれません」
「……気に入ったのか?」
「はい。悪くないです」
「じゃあ、また作るか」
「はい」
その声は、いつも通りだった。
けれど。
リオンの尻尾は、
少しだけ機嫌よさそうに揺れていた。




