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街へいこう

 翌日。


 駅前は、

 休日らしい人混みだった。


 改札から流れ出た人波が、

 広場へゆっくり広がっていく。


 見上げると。


 高層ビルの壁面には、

 巨大な広告。


 《異界素材配合》

 《疲労回復サポート》


 異界素材を配合した

 エナジードリンクの宣伝が、

 当たり前みたいに流れていく。


 そしてその下では、


 様々な人が、

 小さな召喚獣を連れて歩いていた。


 異界接続から十年。


 未知はもう。


 特別なものでは、

 なくなっていた――。


「……思っていたより、普通なんですね」


 隣で、リオンが小さく呟く。


「ん?」


「もっと、

 世界があちら側に

 寄ってきてるかと思ってました。」


「まあ、

 言われてみれば

 あんま変わらなかったな……」


「そうなんです?」


「あれから

 魔法も普及してきたけど。

 結局、

 まだ科学技術の補助って感じだしな…。

 ファンタジーまでは遠いぞ?」


 そう言って、翔が少し笑う。


「なるほど……」


 リオンはまた、

 街へ視線をもどした。


「思っていたより、

 ちゃんとこちら側なんですね。


 ……オレからすると、

 すごく異世界って感じがします」


 そう言いながら。

 リオンの視線は、落ち着かない。


 行き交う人と召喚獣。


 店先に並ぶ、

 異界素材使用の文字。


 異界は、

 確かに存在している。


 それでも。


 街の主役は、

 まだこちら側だった――。


「お前、めちゃくちゃ見てんな」


「いや、結構面白くて」


 少し笑う。


「召喚獣達も、

 普通に受け入れられてるんですね」


「まあな」


「もっと、

 珍しがられてるのかと思ってました…」


 すると、

 すれ違った女子高生達が、

 こちらへ小さく振り返った。


 耳。


 尻尾。


 そして目が合いそうになり、

 慌てて視線を逸らす。


「まあ、

 お前はめちゃくちゃ

 珍しがられてるけどな」


「……やっぱりですか?」


 少し困ったように笑う。


「これはちょっと、

 恥ずかしいです」


「そりゃ、

 その耳と尻尾だしな」


「隠せれば

 楽なんですけど」


「隠せないのか?」


「流石に、そこまで便利じゃないです」


「じゃあ、開き直るしかないな」


「ですね……。

 せめて服くらいは、こっちに合わせます」


「そのために、今から買いに行くんだろ?」


「そうでしたね、マスター」


 少しだけ笑って。

 リオンは、

 翔の後をついていく。


 駅前通りを抜け。


 赤いロゴの店へ着くと、

 翔が言う。


「ここの店な?」


 リオンは、

 視線を上げる。


 ガラス越しに見える服、

 行き交う客、

 そして、見慣れない並び。


「……なるほど」


 ほんの少しだけ。


 尻尾の先が、

 揺れていた――。

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