4話
魔女を先頭に家の中に入る。そう言えばなんでこんな所に家があるんだ……魔女が建てたのか?いや、それはないよね
「お前はいつからここに住んでるんだ?」
頭にふと浮かんだ疑問を投げかける。町での情報に『魔女が住んでいる』なんて無かったからだ。
「お前じゃない、ミリィ」
「え?」
「ミリィと呼んで」
「は?」
「……死ぬ?」
「で、ミリィはいつからここにいるんだ?」
危ない、なんだこの危ない生き物は!脅しのためとはいえよく何回も首にナイフを当てられるな!
「ここにきたのは五年前」
「それからずっと住んでるの?」
「私の家、だから」
「……もしかして、建てたの?」
「……」
目を細めじっと見つめられる。いや、これはあれだ。呆れられてるという奴だ。
「それで、ご飯ってどうするのかな?…まさか俺のこのうさちゃんを狙っている?!」
だめだぞ!コイツは俺の獲物だァっ!魔法ばっかり使うのつらいんだぞ!
「……いいから貸して」
「死んでも離さないよ!俺とうさ子の仲はひきさけない!」
「……頭大丈夫?」
確かに変なテンションだったが真顔で心配されると精神に来るな、くそっ!さすが魔女と言ったところか…って、俺はいつまでこれを続けるんだ!
「今日だけな」
魔女の目的がわからない以上まだ動くべきではない。慎重にいこう。なんせここは鍛錬には丁度いいんだゆっくり行けばいい。
なぜか敵意はないようだし、好意にあやかるのもいいでしょ。
カタコトとご飯の準備をする魔女。なかなかに手際はいい。見た感じ数多くの調理器具を器用に使っている。
……というか、この家結構大きいよな。
俺の部屋として用意されたのは2階の1室。2階だけでも俺のを含め六部屋はあった。一人で住んでいたにしてはかなり大きい。
うーん、他に誰か住んでいたりしていたのだろうか。正直田舎で二部屋の家に住んでいた俺としては落ち着かない!
……居づらい。軽快な包丁の音や鍋から料理の煮える音が聞こえる中何もせずに座っているのが辛い。村にいた頃は俺も一緒に作っていたし、村を出てからは基本一人で食べていたとはいえお店の中、こんな感覚は初めてだ。
結婚して料理作ってもらう旦那さんの気持ちってこんなものだろうか……まぁ現実は全く甘くないんだけど。
「できた」
少し頬を赤らめ自慢げにテーブルに料理を並べる。うん、可愛いんだけど魔女なんだよね…。
こんがりと焼けたパンにミルク仕立ての野菜スープ。メインは俺のフィアンセ、うさ子の串焼き……。
「おいしそう」
「たぶん、おいしいはず」
「た、たぶんってどういうことかな?」
「いつもひとりで食べてたから」
「あ、あー、うん。ってことは俺がおま……ミリィの料理を食べる人間1号ってことだな」
まぁ、こんな所に住んでいたら友達なんていないよね。そういえば家族は……って、魔女の家族って恐ろしいなそれ!
「それじゃ、いただきます」
「いただきます」
さて、スープからっ……の前に
「はい、これ飲んで」
「はむっ……何故?」
「毒味」
まぁ、ないとは思うんだけどここで毒殺でもされたらシャレにならない。生贄とか実験台だとかはごめんだからね
「……むう」
「まさかやっぱり毒が?!」
「…………。あむっ、入ってない」
「なら今の間は何だったんだよ……んっ、美味しいねこれ!」
魔女はどうやら料理も出来てしまうらしい。
彼はまだ私を警戒している。仕方が無いのかな。でも、大丈夫。彼はここから出ることは出来ない。
今から、彼と一緒にご飯。誰かと食事をとるのはすごく久しぶり。
うまく作れるかな、誰かに食べてもらったことなんてないし。今日は彼の獲ってきたアイスホーンラビットもある、品数は増えるけど失敗出来ない。
いつものように作っていると、後ろから視線を感じる。
私にも自覚はある。こんな状況に急に置かれたら警戒もするだろう。
振り返ればボーッとしながらこちらを見つめる彼がいた。彼は妙なところで抜けているというか……少しおかしなところがある。
なんというかその、とても可愛いと思う。
「できた」
うん、うまく出来た。
「おいしそう」
「たぶん、おいしいはず」
うん、大丈夫みたい。よかった
いただきます
パンに口をつける。うん、いい香り。
「はい、これ飲んで」
「はむっ……何故?」
彼がこちらにスプーンを向けてくる。……これって、『あーん』っていうんじゃ。……ふふっ
「毒味」
………………。まだ仲良くはできないらしい、仕方ないけどこれはちょっとムッとする。
「まさかやっぱり毒が?!」
あむっ、せっかく作った自分の料理に毒なんていれない!
もう……知らない。
「なら今の間は何だったんだよ……んっ、美味しいねこれ!」
彼が笑顔を見せる。嬉しい。……っ違う、彼なんて知らない!
……はっ!か、間接キス?
むうぅ、やっぱり彼は少し手強い。




