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ハイスペック・タンクウォーリア ‐コストがかかると追放された壁役重戦士はS級冒険者になって無双する‐  作者: 兎藤うと
一章 白き聖女編

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71. 難攻不落のリック vs 絶対領域のナターシャ

 ナタリアは一部が壊れても完全に割れない障壁を展開して武器を無力化したのだ。


「――ッ!」


 リックは奥歯を噛みしめ、壊れたカートリッジ式蓄積魔導剣をナタリアに投げ捨てた瞬間、魔導剣に蓄積された闘気が制御を失い、爆発した。


 黒煙でナタリアの視界が奪われた瞬間をリックは見逃さず、


「――〈シールドタックル〉ッ!」


 盾スキル〈シールドタックル〉で弾丸のごとく突進し、障壁に残った魔導剣の刀身を利用してすべての障壁を破壊した。そして、突進と同時に装備した魔導軽機関銃〈ヴォルグ04〉をナタリアに向け、ほぼゼロ距離から発砲した。


 ズババババババババババババババババッ、と。


 最大連射速度から発射された弾丸が直撃して火花と白煙が立ち上った。

 発砲をやめ、白煙が沈静していくと、無傷のナタリアが真顔でリックを見ていた。


「マジか」


 リックはそう言いながら榴弾モードに変更して発砲。着弾、爆発と同時にリックも、ガンッ、と魔力障壁で吹っ飛ばされてハルトのそばに落ちた。


「おかえり。おまえら防御を攻撃に使うなんてどんな戦い方してんだよ」

「いつも見てた光景だろ」

「それが二人になればさすがに驚くだろ」


 立ち上がったリックはナタリアの様子を伺っていると、急に彼女の目が金色へと変色し、奇妙な感覚がリックを襲う。リックの様子に気づいたハルトは「どうした」と訊いた。


「……俺のステータスを覗かれた」

「えっ、マジか。そんなこともできんのか」


 リックは焦りを感じた。奥の手を含め、手札をぜんぶ見られたような感触だった。ステータスを覗くような魔眼はないはずなのに、ナタリアはあの金色の瞳で確かに覗いている。


「安心してください。神眼は対象者のすべてを見ることができません。一日数回が限界。魔力の抵抗力が強ければ強いほど強制的に開示できる情報も少なくなります」


 こちらを察してかナタリアは金色の目を〝神眼〟と開示した。そして、ステータスを覗くことができる目だと断言した。それだけでもリックの背筋に汗が滲んだ。


(どうやって倒す?)


 魔法防御に特化し、それを攻撃として使う相手を。



 ナタリアはリックたちに神眼を伝えたが、平然を装った仮面の内側は焦っていた。


(とは言ったものの、どうしたものでしょう)


 と思いながらリックのステータスを見ながら思った。



【名前】リック・ガルートン。

【性別】男性。

【年齢』二〇歳。

【種族】クォータードワーフ(人間、エルフ、ドワーフの混血)

【職業・戦闘系】重戦士。盾士。剣士。狩猟師。魔法戦士。魔術師。■■■。

【メイン・恩恵】防御力上昇。怯み耐性。状態異常耐性。

【職業・生産系】錬金術師。■■■■■■…………………。

【コアスキル】〈冥峰竜の魂源〉。

【ユニークスキル】〈重鎧の誓者〉〈蓄積装甲〉〈闘気操作〉〈食蓄〉■■■■……。

【エクストラスキル】〈殲滅の戦盾〉〈影狼の狩り〉〈魔力操作〉■■■■…………。

【コモンスキル】〈盾術〉〈剣術〉〈重剣術〉〈細剣術〉〈短剣術〉〈双剣術〉〈槍術〉〈斧術〉〈棍術〉〈棒術〉〈体術〉〈仙術〉〈弓術〉〈銃火器運用〉■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■…………………………。

【スキル】〈強化系〉■■■■■■■■…………。

【魔法】〈四大魔法〉〈電撃魔法〉〈重力魔法〉〈治癒魔法〉〈解毒魔法〉〈解呪魔法〉■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■……………………。

【耐性】■■■■■■■■……………………。

【可能性の走り書き】■個。



(にしても数が多い。名のある貴族だったりするのかしら? 確かに〝ハイスペッカー〟に相応しい)


 ナタリアの〝神眼〟は対象者のすべてのステータスを閲覧することはできない。スキルの量が多ければ多いほどその閲覧できる量が限られる。さらにスキルの詳細を閲覧しようとすれば閲覧可能数は減少する。便利に見えてそうではない力。相手も根本的には同じ力の所有者である以上、力によって守られる。


 ナタリアはスキルの詳細を捨て、かなり端折って閲覧している。


(量を取ったせいで詳細まで閲覧できませんが、字面だけでもわかれば十分。しかし……)


 ナタリアはそう思いながらリックのユニークスキル〈闘気操作〉に眉を顰める。


(リック・ガルートンは闘気を認識している? だとしたら厄介ですね)


 ナタリアは杖を、ぎゅ、と強く握りしめる。


(スキルは闘気に魔力を流し込んで発動させる。厳密には人体に宿る〝氣〟と〝魔力〟を混ぜ合わせたものが〝闘気〟なのですが、この際ぜんぶひっくるめて〝闘気〟でいい)


 闘気とはスキル発動に必要な力だ。魔法の行使に魔力が必要なのと同じで。


(スキルが発見されたのは、螺旋を描いた一突きが最初だったとされています。そして、ほぼ同時期に魔法が生まれ、職業という戦士と魔術師の二つが誕生した。それから幾年と月日が流れたが、現代になっても人は闘気を認識できていない。直感で認識しているみたいだけど、魔力と同様に認識しているものは現状いない。目の前にいる存在を除いては)


 今まで知り得ることのなかった闘気を明確に認識する者。リックがそうだとするならば闘気の運用方法は幅広いだろう。


(闘気を自由自在に操れるのなら、魔法同様の運用方法が可能と考えていいのでしょう。それに〈蓄積装甲〉も気になります。おそらく闘気のことでしょうけど、もし上限も制限もなく、貯蔵が可能なら闘気を一気に解放されたら私の結界でも防ぐのは難しい)


 ナタリアは平然をよそおいつつもどう攻めるか悩んだ。


 スキルの長所は魔力消費が魔法の三分の一、短所は連続発動すると威力が半減してしまうこと。逆に魔法は魔力消費量はスキルの三倍だが、連続行使しても威力は変わらない。


 スキルと魔法。かつてはスキルのほうが優勢だったが、今は技術の進歩で魔法も魔法名を唱えるだけで即時に行使できるようになった。だが、それでも魔力消費量は変わらない。自力で消費量を抑えることはできても、そこだけはスキルに敵わない。


――


 ナタリアは追撃してくる様子はなかった。立ったままリックたちの動向を伺っている。むしろ向こうもどう攻めるか悩んでいる。とも読み取れる。


 同じ防御系。崩すのは両者ともに難しい。


「リックは気づいてると思うが。あの聖女、防御系の魔法しか使ってない」


 一連の戦いを観察していたハルトはそういう感想を口にした。


「ああ。神聖術師なら神聖術を使ってくると予想していた」


「だが、使わなかった。使ったのは電撃魔法のみ。ほかは使う様子はない。最初はそういう戦闘スタイルと思ってたんだが、どうも違うようだ」


 ハルトはそう言って言葉を続ける。


「あの防御魔法の数はどう見ても術式の処理速度が異常だ。普通なら脳が焼き斬れる」

「名のある冒険者は何人かは知っているが、あんな芸当ができる人は聞いたことがない」


「それに聖女様の術式も面白い。普通、ああいうのは何枚も展開すると、必ず一定の隙間ができるようになっている。アンデリカの法則だっけか」


「確か術式の影響で、磁石のように反発してるっていうやつだな」


 かつて魔術師であり、研究者でもあったキール・アンデリカが発見した結界術の法則。簡単に言うと、術者と魔力障壁にできる隙間が、障壁同士でも同じようにできるというもの。術者であればほぼゼロ距離まで間を狭めれるが、障壁だとそれが難しい。出力が上がれば、そのぶん障壁同士の隙間が大きく広がっていくのだ。


「あの魔力障壁を飛ばす芸当も、それを利用したものだろう。何枚も切り離すようにして推力をあげて相手にぶつける。それかマジックハンドみたいと言ったほうがいいか?」


 ハルトはそう言いながら片手を握っては開いてを繰り返してみせる。


「未完成の魔力障壁ならいくら展開しても隙間はできないしな」


「それを維持する彼女の技術も相当なもんだけどな。んで、ここで本題に入るわけだが、彼女は本当に神聖術師なのか、ってな」


「神聖術の中にも結界術が含まれているが、それ以外の魔法を使う様子はない」


「なら、神聖術師は聖女の力があいまって本命の職業をカモフラージュとしてるとしたら? 導かれる答えは一つ。もうわかってんだろ?」


 ハルトの問いかけに、リックは頷いた。


「ナタリア・フォルトーナは〝結界術師のハイスペッカー〟だ」


 リックはそう答えた。


 結界術師は結界術を得意とする魔術師だ。完全に守りに特化した魔術師であり、攻撃手段は初級から中級の四大魔法くらいだ。威力はしょうじき心もとない。


 その変わり、防御魔法は非常に強力であり、魔法系のタンクとして前衛で活躍できる。魔法攻撃に弱い重戦士と違って防御に関して弱点はない。あるとすれば術師自体はそこまでではないため、防御魔法さえ突破できれば倒すことは可能だ。突破できればの話だが。


(だが、どう戦う?)


 相手が防御特化と判明したところでリックも攻勢に出るのも難しい話だ。


ーー


 ナタリアは思う。


(そろそろ相手も私の職業に気づいたでしょう。ですが、あの戦士を相手どるのが少し面倒になってきました。できることなら今後、防御特化を相手にしたくないですね)


――


 リックは思う。


(彼女の戦闘スタイルが決まっているなら、結界術さえどうにかすれば勝機はある。となれば魔術師の弱点を狙うのが妥当か)


――


 ナタリアは思う。


(弱点も対策済み。あの防御力を崩すのも不可能。隙を突く余裕すらない拮抗した状態。相手は冒険者。こちらが手を変えようと、臨機応変に対応してくるでしょう)


――


 リックは思う。


(相手も自分の魔力消費量は課題にしてるだろう。当然、対策済みと考えるべきだ。だが、あの処理速度で賄える魔力も有限、枯渇するほうが早いだろう)


――


 カナリアは思う。


(あの鎧の燃費を考えると魔力の消費速度は私とほぼ同じ。持久戦に持ち込めば勝利の可能性は十分にある。下手を打てば、私が先に魔力が尽きる可能性だってありますが)


――


 リックは思う。


(鎧の魔力消費量を含めると向こうと消費速度はほぼ同じ。ストックがあるとしても、下手をすればこちらが先に尽きる可能性もありえる)


 ――


 ナタリアは思う。


(不安を並べても意味がない。やるべきことはたった一つ)


――


 リックは思う。


(ハイスペッカーだからこそわかりやすい。たったシンプルな答え)


――


 両者は、答えを導き出す。


((こちらの魔力が尽きる前に削り切る!))


 リックは走り出し、ナタリアは結界術を展開する。

 両者はぶつかり合い、火花が散った。


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