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4話

「なるほどな、全てはお前達の計算通りか…忌々しい」


やけに草臥れた姿をした父が私達を見ながらそう吐き捨てる。


「ずっと疑問に思っていました…愛人を連れて来るにしてもお母様の葬儀のすぐ後、だなんて」

「肩身の狭い入り婿が厄介なのが居なくなった瞬間に愛人を連れてくることのどこがおかしい」

「その割には、彼女達と籍を入れない選択が出来るくらいには思考が回っていらしたのは何故ですか?……何より、あの後も私への教育を怠らないのも社交界への参加を彼女達にさせずに私にさせる事もおかしいのですわ」


ずっと疑問だった、私が疎外感を感じるくらいには仲がよく、私に対して敵対心が強かった彼女達の訴えがあっても父は私を叱るだけだった。

いずれにせよ酷い父親である事に変わりはないが、考えなしに好き勝手する最低男、にしては少し違和感を感じる行動だった。


(ここからは、殿下が集めてくださった情報からの推測になるけれど…)


「貴方は破滅したかったのでは?………恐らくはお母様の事が…」

「くだらん、それならばこんな事をしなくてもやりようはいくらでもあっただろう」

「捻くれた愛情でもあったんだろう、アイリーン殿やシャルロット、恐らくはあの母娘にも」


ここまで私の傍で黙って成り行きを見守っていた殿下が口を開く。


「元々は資金援助の為の政略結婚だったと聞いている……頭の上がらない日々を過ごしながら、しかし、貴方は愛してしまった。……そしてそれを認めたくなかった」

「…………ギルバート殿下は面白い想像をなさる、作家にでもなったらどうです?」


殿下の部下に連れられて行く、幼い頃の微かな記憶とは似ても似つかない随分と小さくなった背中を見送る。

……今の時点では指輪を動かせるのは当主代理だけだった。次に会えるか分からない背中に、私は何年も前から言わなければならなかった事を告げる。


「淑女としての矜持なのか、お母様は最期まで貴方の事を悪くは言いませんでしたわ。…お父様」


ギルバート殿下曰く、随分とやり手の王妃様の親愛を受けながらもお母様が結婚し、私がお父様の不満を口にする度に困った顔をしていたのは……きっと、そういうことなんだろう。


(正直、私にはお父様へのその気持ちは分かりませんけど)




「……もし、もう少し話し合えていれば何かが変わったのでしょうか?」

「どうだろうな、どのみち結局何も変わらない可能性もある……拗らせる期間が長過ぎると話し合いすらも疑心暗鬼になるだろうしな」

「そう、かもしれませんね」

「それでも、お互いに歩み寄る事が出来れば何かが変わっていたかもしれない…私達のようにな」

「……殿下は少々歩み寄るというには強引過ぎると思いましたけれどね」

「君が消極的だからな。強引くらいが丁度いいだろう」


お互いに茶化しながら笑いあう……この関係も、もう最後だと思うと正直、とても悲しい。


「ありがとうございましたわ。……殿下のおかげで私は諦めずにやり遂げることが出来ました」

「共に来ると決めたのは君だ、シャルロット」

「それでも、ですわ」

「……一つ、まだやり残した事がある。ついてきてくれるか、シャルロット」

「……やり残した事?もちろん私で良ければ」


殿下と共にいられる時間が増えるなら、私に否はない……こういうずるい所は彼らの言う通り悪女なのかもしれないわね…

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