word16 「宇宙が ある場所」①
俺は今、アパートの部屋にいる。
そして、このアパートの部屋は東京都にあって……。
東京都は日本にある。
日本は地球にあって……。
地球は宇宙にある。
これは……そう。わざわざ考えてみなくても分かる。当たり前のことである。
でも、じゃあ宇宙ってどこにあるのか――。
ふとした瞬間に、そんな思考の迷路に迷い込んでしまった。
きっかけは、風呂上がりに飲んでいた……ちょっとお高いビールだったかもしれない。じっくり時間をかけて酔ったせいで、いつもとは違う風に脳を働かせてしまったのかもしれない。
あるいは、天井の隅に溜まった埃が、銀河系の星屑にでも見えたからなのだろうか。
とにかく、考え始めたら止まらなくなった。「地球があるのはどこ?」と聞かれたらすぐに答えられるのに、「宇宙があるのはどこ?」と少し質問を変えるだけで、答えられなくなる。
この難解な問題に対する納得のいく答えが見つかるまで終われそうにない。
――地球がビーズ玉だとすると、太陽はバランスボールほどの大きさになるそうだ。
ピンと来ない話だが、太陽に比べると地球はそれほどちっぽけな存在だということである。
しかしその太陽も、銀河という無数の星の集まりの中では、砂場にある1つの砂粒みたいなもので……。
さらにその銀河も、宇宙においては1つの砂粒みたいなものだという。
「いや、どんだけ広いねん」
まずは宇宙の謎を分かりやすく解説したwebサイトを見た。「宇宙とは」と検索したら出てきた子供向けのサイトだった。
途方もない。余りの規模にポカンと顎が下がる。宇宙がとんでもなく広いという話は何度も聞いたことがある。小学校の授業でも聞いたし、たまに動画サイトで宇宙解説動画を見たりする。
けれど何度聞いても驚く。本当なのか疑わしいほどだ。
宇宙の広さに比べたら人間なんてどんだけちっぽけなんだ。微生物ですらないほどだろう。菌とかそういうレベルだ。もしかしたらそれ以下かも。
菌が地球の広さなど想像できる訳が無いことを考えると、我々人間が宇宙の広さを上手く想像できないことも仕方がない。
ソファに溶けるように座り込み、さらに宇宙のことについて調べた。手以外の部位は完全に力が抜け、口は開きっぱなしだった。
夜空に浮かぶ星には既に消滅しているものもあるとか――。
全てがダイヤモンドの惑星が存在するとか――。
ブラックホールは光すら脱出できない超重力だとか――。
宇宙は138億年前にビックバンにより誕生したとか――。
そんなことを知った。どれも興味深くて、面白い。けれど、俺が今知りたいことではなかった。
138億年前に宇宙が誕生したのなら、139億年前には一体そこに何があったというのだ……。
さらに踏み込んで宇宙の果てについて、普通のスマホで検索してみた。もしも宇宙というものが数多の銀河を乗せる器であるならば、その果てまで行けば、宇宙がどこにあるのか分かるからだ。
画面をなぞり続けると、いくつかの説が見つかった。
空間そのものが宇宙であり、宇宙の外側という概念は無いだとか――。
高次元方向に丸まっていてA地点から果てまで行くと、またA地点に戻ってくるだとか――。
宇宙も無数にあり、我々がいるこの宇宙すらもその中の1つに過ぎないだとか――。
いずれも、もっともらしい説だった。もし単純に宇宙の果てがどうなっているのかを知りたかっただけなら、そんな風に考えられているんだなと、満足できたであろう。
でも違うのだ。これらも俺が知りたい答えではない。
いや、最初から普通のスマホで検索したところで得られるはずがない。分かっていた。
だって広大な宇宙にあるちっぽけな地球にいるちっぽけな人間。そりゃあ光の速度でも何億年とかかる宇宙の果てを知るなんて無理だ。
初めから聞く相手が違う、割と面白かったので気づけば閲覧を続けていただけだ……。




