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何でも検索できるパソコンを手に入れました。ーBPCー(社会人編)  作者: 木岡(もくおか)


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word16 「宇宙が ある場所」②

 俺は黒いパソコンを持ってきて「宇宙が ある場所」と入力してみた。


 酔いとは凄いなと他人事のように思った。酔った勢いでこんな凄いことをやったなんてエピソードはごまんとあるが、まさか宇宙の真相に迫った人はいないんじゃないだろうか。


 大きな検索をすることからはなるべく逃げてきたが、何でもない日にこんな形ですることになるとは……。


 黒いパソコンのキーボードをなぞってみたり、端っこを指でトントンと叩く。Enterキーから遠い場所で指を遊ばせた。


 怖い。本当にやるのか。そんな思いもある。


 けれど、検索を躊躇している訳ではなかった。検索ワードは本当にこれで良いのかと考えていた。


 それというのも自分の中にある疑問を上手く言葉にできていないのだ。宇宙よりも更に広い世界とか空間みたいなものを知りたい訳じゃなくて、この世界の元というか土台というか……。


 先ほど抱いた「138億年前に宇宙が誕生したのなら、139億年前には一体そこに何があった」という疑問が近いと言えば近い。


 もし世界の時間が巻き戻っていって、人間が消え地球も消え……他の惑星も消えたり復活したり……そうして宇宙が縮小していって……。


 ビックバンが起こるずっと前まで戻ったとしたら、そこに何が残るのか。


 宇宙を創造するほどの大爆発を起こせる超高密度のエネルギーだけが残るのか。


 それとも全く何も無くなるのか、時間も空間も無い……無すら無いみたいな状態になるのか。

 

 知りたいことはそんなところのようで、これもまた少し違う――。


 本当の0になるまで時間を巻き戻せば、きっと無すら無いという状態はあるはず。何の専門家でもないけどそう思う。だって0が無ければ1も絶対に無いじゃないか。


 赤も青も無い。木も土もない。右も左も無い。光も影も無い。音も匂いも無い。意識も感情も無い…………が、あるはず。


 だとしたら何故そんな場所に今、宇宙なんてものが生まれているのか。何も無ければ作る必要も無いし、作ることもできないはず。じゃあ何故あるのか、どうやって、その意味は。


 世界が存在する意味が知りたい…………のだろうか。とにかく自分でもよく分からない。


 缶ビールを振り上げて飲んだ。さっきまで飲んでいたものとは違って安物だった。まだ飲みたかった訳でもないけど、1杯目のように飲んだ。


 もうこれ以上考えていても頭が痛くなっていくだけ、おそらくタブーなんだ。明確な疑問にすらできない。人間にとっては触れられたとしても触れないほうが良い領域。


 だからもうあとは勢いである。黒いパソコンなら人間の言葉にできない疑問すらも解決してくれるのだから。


 俺はEntetキーを押した。本当に酔いとは凄いと思った。とんでもない検索をしているのに全く恐れることなく、むしろ早く表示しろと急かすように連打したのだから。


 やたら頭は冴えていて、グルグルが表示されている短い間で怖いものなしの自分が可笑しくなった。


 そして一瞬、もしかしたら今回の検索は黒いパソコンすらも答えを表示できないのではとも思う――。


 しかし、あっさりと答えは画面の中に――。


「宇宙がある場所はこのパソコンの中です。」


 まず上部に大きく表示された。それを見た俺は「いやお前かよ!?」と突っ込まざるを得なかった。


『宇宙はこのパソコンの中にあって、このパソコンは宇宙にあります。この意味が分かるでしょうか。そして、各パソコンに同じ宇宙がある訳ではありません。1つのパソコンに1つの宇宙がある訳ではありません。平均すると約70億個の宇宙があります。あなたが先ほど宇宙の果てについて調べて閲覧した説で言うと、「高次元方向に丸まっていてA地点から果てまで行くと、またA地点に戻ってくる」「宇宙も無数にあり、我々がいるこの宇宙すらもその中の1つに過ぎない」というのに近いですね』


 自分のことが可笑しくなって膨らんでいた頬は、そのまま膨張して解き放たれた。ヤケクソの笑いだった。


 つまりは始まりも終わりも無い、無限ループというやつか。いや無限に広がっているというなら全てが端とも言えるのかもしれない。ああ、自分でも何言ってるか分かんねえや。


 頭の中で、人間を菌以下にしてしまうほど広大な宇宙がさらに多方向へ増殖していくのを想像する。それこそ菌のように倍、そのまた倍へと増やしてみる。


 まるで漫画やアニメで主人公たちがいた世界は、巨大な湖の中にある小さな島でしたという展開を見た時の気分だ。しかも1度ではなく、その外側の世界のさらに外側にも世界が広がっているよと言われたみたい。


 つまりアホらしくなった。無限の中の1つが持っている意味など考えて何になるんだ。俺たちの今までの冒険は何だったんだ。


 そして、考えるのをやめた……。


 検索結果の文は読めば理解できる。しかし胸の中にあるモヤモヤが完全になくなった訳ではないし、新たな疑問も生まれた。


 でも全部どうでもよくなった。


「無限ループの始まりとなったオリジナルの宇宙が生まれた意味は実は私にも分かりません。しかし、仮説であれば答えることができますが表示しましょうか?」


 黒いパソコンから続けてこんなことも言われたが、俺は「いらないです」と即答した。


 やはり酔った勢いでやることなんて、良い結果にはならないのだ。

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