サンザイ砂漠とヤクホーシの謎 炎の救世主
モモトとオーディは、照りつける太陽の下を歩き続けていた。
見渡すかぎり、砂、砂、砂。
どれだけ歩いても景色はほとんど変わらない。
熱い風が吹くたび、足跡はあっという間に砂へ消えていった。
「本当に誰か住んでるのかな……。」
モモトは額の汗をぬぐう。
オーディも周囲を見回した。
「分からん。」
「だが、これだけ広い砂漠なら、どこかにオアシスくらいはあるはずだ。」
二人は黙って歩き続けた。
そのときだった。
サラサラ……。
モモトの足元の砂が、小さく動いた。
「ん?」
風かと思った。
しかし、次の一歩を踏み出した瞬間だった。
ズズズズズズッ!!
砂が大きく崩れ落ちる。
「わあっ!」
モモトは砂へ足を取られた。
目の前には、大きなすり鉢のようなくぼみができている。
砂は渦を巻きながら中心へ流れ込んでいた。
「モモト!」
オーディが腕をつかむ。
しかし、その足元も砂に沈んでいく。
「くっ!」
そのとき。
砂が大きく盛り上がった。
ズズズズズッ――。
砂の中から、黒茶色の長い体が姿を現す。
何十もの節がうねるたび、砂が滝のように流れ落ちた。
鋭く曲がった二本のあご。
無数の足が砂をかき分け、熱い砂煙を巻き上げる。
その姿は、巨大なムカデそのものだった。
「オーディ!」
「あの怪物、何なの!?」
オーディは剣を抜きながら首を振る。
「分からん……。」
「ジョーザイ王国にも、あんな魔物はいない!」
巨大なムカデは体を大きく反らせる。
次の瞬間――。
ドォンッ!
砂の中へ一気にもぐり込んだ。
「消えた!?」
「モモト、動くな!」
オーディが叫ぶ。
しかし、その声より早く。
モモトの真下の砂が大きく盛り上がった。
怪物は大きく口を開き、二人をのみ込もうと砂を巻き上げた。
「離れろ!」
オーディは剣を抜き、勢いよく飛び込む。
「ムーンブ──」
言葉の途中で動きが止まった。
剣が重い。
足も重い。
「くっ……!」
ジョーザイ王国を離れてから、命の泉の力は少しずつ弱まっていた。
今のオーディには、あの力はもう残っていない。
剣は怪物の殻にはじき返される。
ガキンッ!
「しまった!」
怪物がさらに砂を巻き上げる。
二人の体は少しずつ渦の中心へ引きずり込まれていった。
「オーディ!」
「モモト、手を離すな!」
その瞬間だった。
「バインドパウダー!」
白い粉がネッパツへ降り注ぐ。
怪物の体がぴたりと止まった。
「兄さん!」
後ろから小さな女の子が駆け寄ってくる。
「急がないと!」
「分かってる。」
サイリュウはモモトとオーディを引っ張り上げた。
二人は砂の上へ転がる。
「はあ……はあ……。」
息を整えながら顔を上げる。
そこには、一人の少年と、その後ろにそっと身を寄せる少女が立っていた。
少年はモモトたちより少し年上だろうか。
まっすぐ二人を見つめ、砂漠に慣れたような落ち着いた表情をしている。
一方、少女は兄の背中に半分隠れるように立ち、不安そうにモモトたちを見つめていた。
二人とも額には、小さな炎の刻印が輝いている。
その刻印を見た瞬間、モモトは目を見開いた。
「あっ……。」
見覚えがあった。
ジョーザイ王国で街路樹の手入れをしていた、あの老人。
その人と、同じ炎の刻印だった。




