サンザイ砂漠とヤクホーシの謎 サンザイ砂漠
そこは、ジョーザイ王国とはまるで違う世界だった。
見渡すかぎり、果てしなく続く砂の海。
空には雲ひとつなく、太陽が容赦なく照りつけている。
熱せられた砂が、陽炎となってゆらゆらと揺れていた。
「暑い……。」
モモトは思わず額の汗をぬぐう。
靴の裏からじりじりと熱が伝わり、一歩歩くたびに砂へ足が沈んだ。
思わず振り返る。
けれど、さっきまであったはずの入口は、どこにもなかった。
モモトはゆっくりと立ち上がった。
「ここも……ジョーザイ王国なのかな。」
見渡す限り、砂、砂、砂。
遠くには赤茶色の岩山が連なり、太陽が容赦なく照りつけている。
前に訪れた白い石畳の町とは、まるで別の世界だった。
(ヒートドラゴンがいたカート山脈とも違う……。」
熱い風が砂を巻き上げ、モモトの頬をなでる。
「とりあえず……。」
モモトはポケットからピルケースを取り出した。
「あれ?」
月の部屋を見ると、さっきまで錠剤だったオーディが、小さな人の姿に戻っている。
「えっ!?」
「錠剤じゃなくなってる!」
モモトがあわてて月の部屋のふたを開ける。
すると、青白い光とともにオーディが飛び出した。
「ぷはっ!」
「助かった!」
オーディは大きく息を吸うと、周囲を見回した。
「ここは……。どこだ。砂漠?」
モモトはほっとしたように笑った。
「よかった。ピルケースの中で薬になっちゃったから、びっくりしたよ。」
オーディの顔色が変わった。
「その名を軽々しく口にするな。」
「え?」
「「俺などが、クスリを名乗れるものか。」
モモトは首をかしげる。
「まあ、いい。」
オーディは小さく肩をすくめると、辺りを見回した。
「しかし、暑いな。」
焼けつくような風が砂を巻き上げる。
「これだけ広い砂漠となると……。」
「サンザイ砂漠か。」
オーディは空を見上げた。
青い空には、ぎらぎらと太陽が照りつけている。
「……月が見えない。」
「え?」
「ジョーザイ王国では、昼でも満月が王都の上に見えている。」
オーディはゆっくりと辺りを見回した。
「もしここがサンザイ砂漠なら、あの月が見える方向に王国があるはずなんだ。」
しかし、どこを見ても砂の海が広がるばかりだった。
オーディは小さく息をつく。
「見えないということは……。」
「少なくとも、歩いて帰れる距離じゃない。」
モモトは不安そうにオーディを見上げた。
「どうするの?」
オーディはモモトの額ににじむ汗を見て、少し表情を和らげた。
「焦らなくていい。」
「まずは街か、オアシスを探そう。」
「こんな暑さじゃ、俺よりお前のほうが先に倒れちまう。」
モモトは苦笑いする。
「オーディだって暑そうだよ。」
オーディも肩をすくめた。
「まあな。」
「いくら水がなくても動けるとはいえ、この暑さは別だ。」
「長居はできそうにない。」
二人は照りつける太陽を背に、砂漠の奥へ歩き始めた。




