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好きって言えなかったけど、それでも私は  作者: ぴぽこ
日常編

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2/10

第1話 朝の教室

私は毎日、早めに家を出て学校へ行く。


理由はもちろん、朝も学校で勉強をするためだ。

……表向きの理由は。


教室の扉をちらちらと見る。そろそろ来るはずなんだけどな〜。

前の時計にも目をやる。やっぱり今日は少し遅い。


落ち着こうと参考書を開き、勉強に集中しようとする。


それから5分ほど経ったときだった。


ふと、廊下から足音が聞こえてくる。

反射的に顔を上げる。


この足音は……


教室の扉の向こうに、人影が映る。


やっぱり。


誰が来たのか分かった瞬間、心臓《しんぞう》がどくどく鳴り始めた。

慌てて視線を参考書に落とし、勉強に集中しているふりをする。


ガラガラガラ

扉が開く。


「あ、りかっち、おはよ〜。今日も早いね〜」


「心路もおはよ〜」


それだけで、胸がどきっとする。


しかも、今、教室にいるのは二人だけ。

この絶好のシチュエーション、神すぎる〜!!


毎朝これを味わうためだけに、早く学校に来ていると言っても過言ではない。いや、実際にそれが理由で毎日早く来ているのだが。


ちなみに、今挨拶してきたのは白井《しらい》心路《こころ》。

そして、変なことでドキドキしている私は三中《みなか》梨花《りか》。


いや、分かってる。自分でも、こんなことでドキドキしているのは変だって。


でも普通に考えてほしい。

好きな人から挨拶されたらドキッとするでしょ? しかも二人きり。

だから別に普通のことなんだよ。私にとっては。


でも、少しだけ自分が同性愛者なのについてはコンプレックスを抱いている。

こんな二人きりの絶好な場面、告ればいいじゃんと思うかもしれないが、できないのだ。


心路は鞄を席に置くと、数学の教材を取り出して勉強を始めた。

席は、私から見て斜め前だ。


はぁ〜

別に、心路は私にとって普通の友達なんだろうな。

私は心路のことが好きなのに。


「ん、急にどしたの?」


「あれ、今、私なんか変なこと言った?」


急に話しかけられて、わかりやすくテンパる。

え、もしかして今の心の声、出てた?


「でっかいため息ついてたよ」


……言葉は出てなかったっぽい。

いや、でも本当にため息だけだった?

一応確認。


「あ〜、あとさ、私、今独り言とか言ってなかった?」


「いや、何も言ってなかったと思うけど……なんで?」


よかった〜。

あれを聞かれてたら、私という私が社会的に終わっていた。


というか、心路に距離を置かれるのが一番キツい。

同性愛者だってバレたら、引かれそうだし。


だから私は、心路に『好き』って言えない。


別に何もなかったような顔をして心路の言葉に返答する。

「あ、ならよかった。邪魔したかなと思って」


「ふ~ん」

そう言った途端、心路がいきなりくるりと振り返って、ニヤニヤしながらこっちを見てくる。


何を発するのかと思えば、

「え、もしかして……恋の病?」

心路の言葉が、的確に私の心を撃ち抜いてきた。


……ず、図星です。


「あ、黙ったってことは、さては図星だな〜。へぇ〜、誰誰《だれだれ》?」

察しの良すぎる心路が、さらに追撃してくる。


……

……

……いや、お前だよ!!


とは、もちろん言えるわけもなく。


「別に〜、ひみつ〜」


「え〜、教えてよ〜」

そう言って笑った心路が、いきなり少し咳き込む。


「大丈夫?」


「うん、ちょっと喉が乾燥しただけ」


そう言って心路は笑った。

かわいい〜。私の目がハートになってしまう。


こうして今日も、いつも通りの一日が始まったのであった。

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