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第67話:根と源

工房に着いたのは、夕方だった。


アルデンが表の部屋で器具の整理をしていた。アルノーが入ると、手を止めた。


「どうだった。」


「二つの符号の意味が分かりました。『根』と『源』です。」


「根と源。」アルデンが繰り返した。「オーリンという老人が知っていたのか。」


「祖父から聞いた言葉として。正確な意味は分からないが、三百年前に地下に残されたものを示す符号だと言っていました。」


「根と源か。」アルデンが椅子に座った。「師匠の記録に、その言葉が出てくる。」


「どこですか。」


アルデンが奥の部屋に入って、記録紙を持ってきた。


「師匠が最後に書いたページだ。」アルデンが記録紙を広げた。「以前、未解読の符号の一覧が書かれていると言ったが——その後ろに、もう一枚あった。お前にはまだ見せていなかった。」


アルノーは記録紙を受け取った。


師匠の字で、短い文章が書かれていた。


「流れの原則の根源は、地下に残されている。三百年間、読める者を待っている。根は場所を示し、源は内容を示す。二つが揃えば、残されたものに辿り着ける。ただし、内容を知った者は——選択を迫られるだろう。」


アルノーはその文章をもう一度読んだ。


「選択を迫られる。」


「師匠が、そう書いた。」アルデンが言った。「何の選択かは書いていない。」


「内容を知らなければ、選択の意味も分からない。」


「そうだ。」アルデンが続けた。「根は場所を示し、源は内容を示す。壁画の中に、この二つの符号がある。」


「壁画が、根と源の情報を持っているということですか。」


「そうなる。」アルデンが写しを手に取った。「壁画の外周の符号の配置を、もう一度確認しよう。」


二人で写しを見た。


外周の符号が、円周に沿って並んでいる。


「根の符号は、外周の右側にある。」アルノーが指した。「源の符号は、左側にある。」


「右と左に分かれている。」アルデンが言った。「右側の符号群が場所を示し、左側の符号群が内容を示す可能性がある。」


「右側の解読できる符号は——流れ、向き、深さ、場所。」アルノーが確認した。「場所の情報が、右側に集まっています。」


「左側は。」


「源、中心、時、意図。」アルノーが言った。「内容に関わる言葉が、左側に集まっています。」


「二つに分けて読む、ということだ。」アルデンが頷いた。「右側が次の場所を示している。左側が、そこに残されているものの内容を示している。」


「右側から、次の場所が読めますか。」


アルデンが対応表と写しを照合した。


右側の符号を、順番に読んでいく。


「流れ——向き——深さ——場所——根。」アルデンが言った。「流れの向きに従って深く進む場所。根の方向。」


「具体的にはどこですか。」


「北だ。」アルデンが言った。「北の方向、深い場所。」


「北区画に、廃墟の地下室があるという情報をオーリンから聞きました。そこかもしれません。」


アルデンが顔を上げた。


「……場所が特定できたのか。」


「地図をもらいました。」


「早すぎるな。」アルデンが少し笑った。「師匠が一生かけて辿り着けなかった場所に、お前は数週間で辿り着こうとしている。」


「多くの助けがありました。」


「それも実力だ。」アルデンが真面目な顔に戻った。「明日の放課後、レイドを連れて行け。一人で行くなと、オーリンも言ったんだろう。」


「はい。そうします。」


アルノーは記録紙を片付けた。


根と源。


場所と内容。


その先に待っている「選択」とは何か。


月が、また少し太くなっていた。

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