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第58話:二回目の観測

ソレルの頭の重さが取れたのは、三日後だった。


「今日は大丈夫です。」ソレルが朝食の場で言った。


「無理はしないでください。」


「無理ではない。」ソレルが言った。「あの音が、頭の中に残っている。不快ではないが——気になる。早く解読したい。」


アルノーはその言葉を聞いて、少し間を置いた。


ソレルが「したい」という言葉を使うのは、珍しい。いつもは「する」か「しない」かだ。


「では今日の放課後、行きましょう。」


「分かった。」


今回もレイドは入り口で待つことになった。レイドは文句を言わなかった。「また待つのか」と言いながら、石畳の上に座って本を開いた。本を読む習慣はなかったはずだが、最近始めたらしい。


地下通路に降りた。


前回と同じ手順で、壁の陣式の前に立った。アルノーが照明を作り、記録紙と筆を用意した。


「今日は、前回の記録と照合しながら進めます。」アルノーが言った。「前回と同じパターンが出てきたら教えてください。違うパターンが出てきたら、それも教えてください。」


「分かった。」


ソレルが目を閉じた。耳が、ゆっくりと陣式の方向に向いた。


アルノーも観測を始めた。


螺旋状の流れ。前回確認した通りだ。今日は、流れの細部ではなく、流れの変化のタイミングを重点的に観測した。


「音が来た。」ソレルが目を閉じたまま言った。「前回と同じだ。低い音から始まる。」


「低い音が続く長さは。」


「前回と同じ。長い。」


「高い音への切り替わりは。」


「……今。切り替わった。短い。」


アルノーは記録した。


前回と同じパターンが再現されている。これで、パターンが偶然ではないことが確認できた。


しばらく観測を続けた。


「今日は——少し違うことが分かった。」ソレルが言った。


「どういうことですか。」


「低い音の中に、さらに細かい変化がある。前回は気づかなかった。」ソレルが続けた。「低い音が、少し高くなる瞬間と、少し低くなる瞬間がある。規則的に。」


「規則的に変化している。」


「そうだ。三回高くなって、一回低くなる。それが繰り返されている。」


アルノーは記録した。


三回高く、一回低い。これが低い音の中のさらに細かいパターンだ。


師匠の記録に戻った。場所を示すパターン、時を示すパターン、意図を示すパターン。三つが組み合わさっている。


低い音の大きなパターンが一種類の情報を示し、その中の細かいパターンが別の情報を示している可能性がある。


「ソレル。高い音の中にも、細かい変化がありますか。」


ソレルが少し間を置いた。


「……ある。高い音は短いので、気づきにくかった。でも——二回来て、途切れる。それが繰り返されている。」


「二回来て、途切れる。」


「そうだ。」


アルノーは記録紙に書き込んだ。


低い音の中——三回高く、一回低い。

高い音の中——二回来て、途切れる。


これが、場所・時・意図のいずれかを示しているはずだ。


「今日はここまでにしましょう。」


「まだ聴けるが。」


「十分です。前回より多くの情報が取れました。」


ソレルが目を開けた。今日は前回より表情が落ち着いている。


「解読できそうか。」


「パターンの構造が見えてきました。」アルノーは言った。「低い音の大きなパターンが、おそらく場所を示している。高い音の短いパターンが、時か意図を示している。」


「場所というのは、旧市街のどこかですか。」


「それはまだ分かりません。」アルノーは続けた。「ただし、もう一回観測すれば——具体的な場所が見えてくるかもしれません。」


「もう一回。」


「はい。三回目で、パターンが確定できると思います。」


二人で地下通路を戻った。


レイドが入り口で本を閉じて立ち上がった。


「どうだった。」


「前回より進みました。」


「どのくらい。」


「パターンの構造が見えてきました。あと一回で、具体的な内容が分かるかもしれません。」


「楽しみだな。」レイドが言った。「三百年前に誰かが刻んだメッセージ。どんな内容だと思う。」


アルノーは少し考えた。


場所を示し、時を示し、意図を示す。三百年前に流れの原則の流派が排除される前に、誰かが地下に刻んだ。


「まだ分かりません。ただし——」


「ただし?」


「重要な内容だと思います。簡単に消えない場所に刻んだ理由があるはずです。」


「石壁に刻んだのは、消えないようにするためか。」


「そうだと思います。百年以上経っても、陣式が動いています。消えないように、かつ機能し続けるように設計されている。」


レイドが少し考えた。


「そこまで手間をかけて残したってことは——誰かに伝えたかったことがあったんだな。」


「そうだと思います。」


「誰に。」


「まだ分かりません。」


「いつか分かるか。」


「三回目の観測で分かる可能性があります。」


レイドが頷いた。


三人で旧市街の路地を歩いた。


夕方の空に、新月を過ぎたばかりの細い月があった。前日より少し太くなっている。


少しずつ、満ちていく。


パターンも、少しずつ見えてきた。


アルノーは記録紙を確認しながら歩いた。


低い音の中の三対一のリズム。高い音の二回と途切れ。


これが何を示しているか。


アルデンに見せれば、師匠の記録と照合できるかもしれない。


明日、工房に持っていく。


学園への道を、三人で歩いた。

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