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第53話:結果

結果が届いたのは、審査から六日後だった。


朝、学務室の掲示板に封書が置かれていた。アルノーとリュミエール宛、連名の封書だ。


アルノーが封を開いた。


一枚の通知書が入っていた。


「均整理論実証報告書の審査結果について。審査委員会は、提出された報告書の内容を確認した結果、均整理論が王立の魔法体系を補完する理論として一定の有効性を持つと判断しました。ただし、正式な王立認定には追加の実証が必要です。一時停止措置は解除し、活動を継続することを認めます。なお、クレイン委員より提出された異議申し立ては、委員会の多数決により棄却されました」


アルノーは通知書を読み返した。


一定の有効性。追加の実証が必要。活動継続を認める。異議申し立ては棄却。


「どうでしたか」


廊下の端で待っていたリュミエールが近づいてきた。アルノーが通知書を渡した。


リュミエールが読んだ。


しばらく黙っていた。


「……認められました」


「完全な認定ではありませんが、活動は続けられます」


「異議申し立ては棄却された」リュミエールが通知書を返した。「クレイン先生の主張が退けられたことは、大きいです」


「そうですね」


「あなたは——嬉しくないのですか」


アルノーは少し考えた。


嬉しい、という感覚があるかどうか。今、自分の体の状態を確認した。心拍がわずかに上がっている。それが嬉しさなのかどうかは、判断が難しい。


「何かが動いている気はします」


「動いている?」


「六十年前の師匠の研究、三十年前のアルデンの研究、そして私の理論。それが繋がって、一つの流れになった。そのことが、心拍を上げているのかもしれません」


リュミエールが通知書を見つめた。


「……あなたのそういう言い方、嫌いではありません」


「ありがとうございます」


「追加の実証も、手伝います。まだ私の陣式も、改善の途中ですから」


「お願いします」


その日の放課後、裏庭でレイドとソレルに結果を伝えた。


通知書を読んだレイドが、しばらく黙った。それから言った。


「認められたのか」


「完全ではありませんが」


「十分だ」レイドが言った。それから、少し間を置いて続けた。「正直に言う。俺、ちょっと泣きそうだ」


「なぜですか」


「なぜって」レイドが天井を見た。「お前と一緒に裏庭で実験を始めたのが、ついこの前みたいな気がするのに。それがもう、王立の審査委員会に認められる段階まで来た」


「三十五日前です」


「お前は本当に正確だな」レイドが笑った。「でもそれが——すごいことだと思う」


ソレルが静かに言った。


「認められたのは、正しかったからだ」


「そうですね」アルノーは言った。


「正しいものが認められた」ソレルが続けた。「それだけのことだが——それだけのことが、六十年かかった」


アルノーはソレルの言葉を聞いて、少し間を置いた。


「師匠の研究が、六十年かかった。アルデンの研究が、三十年かかった。私は入学から三十五日でした」


「なんで三十五日で、他は何十年もかかったんだ」レイドが聞いた。


「時代が変わったからかもしれません。ハーデン委員がいたからかもしれない。リュミエールさんが動いたからかもしれない。どれが主な理由かは分かりません」


「全部が重なったんだな」


「そうだと思います」


レイドが裏庭を見回した。


割れた石床、苔の壁、雑草。整備されていない空間。


「ここで始まったんだよな。この裏庭で」


月の光が、少しずつ裏庭を照らし始めていた。

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