第48話:前日
審査の前日、三人でギルドに向かった。
レイドが西門を出た瞬間から、周囲を見回していた。
「初めて来た。学園の外って、こんな感じか」
「来たことがなかったのですか」
「外出許可を取るのが面倒で」レイドが石畳を踏みながら言った。「お前はよく来るんだな」
「依頼がありますから」
ソレルは黙って歩いていた。旧市街に来たとき以来の外出だ。耳が少し動いているが、以前より落ち着いている。
ギルドの扉を押して入ると、テーブルにヴェルクがいた。アルノーに気づいて顎をしゃくった。レイドを見て、少し目を細めた。
「仲間を連れてきたか」
「一緒に依頼を受けます」
「でかい体してるな」ヴェルクがレイドを見た。「魔力はあるか」
「あります。最近、制御が少しできるようになりました」
「少し、か。正直なやつだ」ヴェルクが鼻を鳴らした。「まあ、アルノーの仲間なら悪くないだろう」
レイドがアルノーに小声で言った。
「あいつ、知り合いか」
「最初に来たとき、馬鹿にされました。今は少し違います」
「どうして変わったんだ」
「装備の蝶番を直したので」
レイドが少し目を丸くした。
カウンターに向かうと、エレナが立っていた。アルノーを見て、次にレイドとソレルを見た。
「全員で依頼を受けるのか」
「はい。申告書を持ってきました」
「確認する」エレナが申告書を受け取った。「今日の依頼は何を受けるつもりだ」
「旧市街の倉庫群の照明陣の点検を受けます。数が多いので、三人で分担します」
「分かった。位置はこの地図の通りだ」
エレナが地図を広げた。
「点検の基準は、均整の崩れを確認すること。熱を持っているものや、音が鳴っているものがあれば報告して」
「レイド、熱があれば、歪みがある可能性があります」
「それだけか」
「それだけです」
「簡単だな」
「ソレルは音を確認してください。不快な音がある陣式に印をつけてもらえれば、後で修正します」
ソレルが頷いた。
依頼票を受け取って、三人で倉庫群に向かった。
倉庫群は、旧市街の東端に並んでいた。石造りの倉庫が十棟、通路を挟んで並んでいる。それぞれの入り口の上部に、照明陣が設置されていた。全部で二十四個。
「では分担します」アルノーが言った。「レイドは左側の十二個、ソレルは右側の十二個を確認してください。熱がある、または不快な音がある陣式に白墨で印をつけてください」
「白墨はどこだ」
アルノーが二人に白墨を渡した。
三人が分かれた。
アルノーは全体を見回しながら、二人の動きを観測した。
レイドが一番目の陣式に手を当てた。しばらく確認して、首を横に振った。問題なし、という意味だ。次に移る。動きが速い。
ソレルが一番目の陣式の前に立った。目を閉じて、耳を向けた。しばらくして、首を横に振った。次に移る。こちらも動きが丁寧だ。
二十分ほどで、二人が戻ってきた。
「左側は三個に印をつけた」レイドが言った。「熱があった」
「右側は二個」ソレルが言った。「音が乱れていた」
五個に歪みがある。アルノーは印のついた陣式を順番に確認した。
レイドが印をつけた三個は、確かに熱がある。歪みが蓄積していた。アルノーは素早く交点を修正した。数秒で熱が引き始める。
ソレルが印をつけた二個は、高周波の音が混じっていた。こちらも修正を加え、音を消した。
「終わりました」
「もう直したのか」レイドが驚いた顔をした。
「点検と修正はセットです」
三人はギルドに戻り、報告を済ませた。
「これで実績がまた増えました」
明日の審査に向けて、最後の準備が終わった。




