第47話:通知
審査委員会の日程通知が届いたのは、報告書を提出してから四日後だった。
学務室の掲示板に、アルノーとリュミエール宛の封書が置かれていた。開くと、審査委員会の開催日時と場所が記されていた。一週間後の午前、管理棟の大会議室。
大会議室、というのが引っかかった。
前回の審査委員会は、小さな会議室だった。今回は大会議室だ。
場所が変わっている。
「大会議室は、正式な審査に使う部屋です」廊下でリュミエールが言った。「通常の審査より、規模が大きくなるということです」
「クレイン先生の異議申し立てが、正式に受理されたからですか」
「そう思います。異議申し立てと報告書の審査が、同じ場で行われることになった」
アルノーは状況を整理した。
均整理論の実証報告書の審査と、クレインの異議申し立てが、一つの場で同時に行われる。委員の数も増えるだろう。王立魔法学会から来る人数も、前回より多い可能性がある。
「大きな場になりますね」
「なります」リュミエールが言った。「ただし——大きな場になるほど、結果の影響も大きくなります。認められれば、前回より強い効力を持ちます」
「逆に、却下されれば」
「より強い制限がかかります」リュミエールが続けた。「覚悟はできていますか」
「できています」
「私もです」
その日の放課後、裏庭でレイドとソレルに状況を話した。
レイドが腕を組いて聞いていた。ソレルは壁際に座って、目を閉じたまま聞いていた。
話し終えると、レイドが口を開いた。
「つまり、一週間後に大きな審査がある。そこで認められればOK、却下されれば今より厳しくなる。そういうことか」
「そうです」
「お前は、どう思っている」
「認められると思っています」
「根拠は」
「報告書の内容が正しいからです。先行研究もある。数値もある。実績もある」
「それで十分か」
「技術的には十分です。政治的には分かりません」
レイドが息を吐いた。
「政治的に、というのが問題だな。俺みたいな単純な人間には、難しい話だ」
「単純であることは、問題ではありません」アルノーは言った。「レイドの炎が安定していることは、均整理論の実績の一つです。審査の場で言及する可能性があります」
「俺が?」レイドが少し驚いた顔をした。「俺の名前が審査に出るのか」
「出てもいいですか」
「……構わないが。お前の役に立つなら」
ソレルが目を開けた。
「私の件も、出していいか」
「はい。ソレルの知覚の改善も、実績として含めたいと思っていました」
「分かった」ソレルが目を閉じた。「ただし、俺の耳のことは——詳しく書かなくていい。感覚が改善されたという事実だけで」
「分かりました」
状況は整いつつあった。
技術、数値、先行研究、そして実績。
これらを組み合わせて、一つの流れを作る。
一週間後。
その時に向けて、アルノーは観測を続けた。




