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第14話:普通の学生

合同実技の授業が終わると、生徒たちは三つの寮に分かれて戻っていく。


アルノーはレイドとソレルと並んで演習場を出た。廊下を歩きながら、先ほどのリュミエールとの会話を整理した。彼女は「今日のことは認めていない」と言った。しかし陣の強度が上がったことは、本人が一番よく分かっているはずだ。


認めていないことと、理解していることは、別の話だ。


「さっきの首席、また来ると思うか」レイドが言った。


「来るかどうかは分かりません」


「俺は来ると思う。ああいうタイプは、納得できないと気が済まないはずだ」


「そうかもしれません」


灰練への廊下に差し掛かったとき、前から歩いてくる人物がいた。


灰練の制服を着た、アルノーと同じくらいの年齢の少年だ。背は平均より少し高く、体格は普通だ。髪は淡い茶色で、顔立ちは整っている。笑顔で歩いており、他の灰練の生徒に声をかけながら進んでいた。


「お疲れ様です。今日の合同実技、大変でしたね」


話しかけられた生徒が、少し戸惑いながら返事をしている。灰練の生徒同士でも、まだ打ち解けていない者が多い。その中で、この少年だけが自然に声をかけて回っている。


アルノーはその少年を観測した。


笑顔は自然に見える。声のトーンも、親しみやすい。しかし——目が、笑っていない。口元と目元の表情が、わずかにずれている。


作っている、とアルノーは思った。


笑顔を作ることは、特別なことではない。礼儀として、あるいは円滑なコミュニケーションのために。だが、この少年の「作り方」は、他者からどう見えるかを完璧に計算しているように見えた。


少年の視線がアルノーに向いた。


「君が、アルノー・ヴァレリウスくんだね」


少年が足を止めた。笑顔は崩さない。


「はい」


「セインです。同じ灰練の。よろしくお願いします」少年が手を差し出した。「合同実技で首席と話していましたね。何を話していたんですか」


「陣の修正の話です」


「陣の修正」セインが少し目を細めた。「灰練の一年生が首席と話す機会は、なかなかないですよ。何か特別なことを言ったんですか」


「交点の角度を変えれば滞留が減るという話をしました」


「ああ、均整理論ですね。噂は聞いています」


アルノーは少し驚いた。均整理論という言葉を、この少年は既に知っている。入学してまだ二週間も経っていない段階で、灰練の最下位の理論の噂を聞いているということは、情報の入手経路が広い。


「どこで聞きましたか」


「色々なところから」セインが笑ったまま答えた。「学園の中は、思ったより情報が速く回るんですよ。面白いですよね」


「そうですね」


「ところで、一つ聞いてもいいですか」セインが続けた。「均整理論って、実際に効果があるんですか。僕には魔法陣の細かいことはよく分からなくて」


「あります」


「どんなふうに効果が出るんですか。簡単に教えてもらえると嬉しいのですが」


アルノーはセインを観測した。


質問の内容は素朴だ。魔法陣に詳しくない生徒が聞きそうなことを聞いている。しかし目が、答えを待っている目ではない。すでに何かを知っていて、アルノーがどう答えるかを確認している目だ。


「歪みを制御することで、魔力の消耗を減らします」アルノーは簡潔に答えた。


「なるほど。それは便利ですね」セインが頷いた。「また色々教えてください。よろしくお願いします」


セインはそう言って、また別の生徒に声をかけながら去っていった。


「……あいつ、何なんだ」レイドが眉を寄せて言った。「なんか、落ち着かないやつだな」


「普通の学生のフリをしているように見えました」


「フリ?」


「はい。自分の能力や目的を隠して、周囲に馴染もうとしている」


「最下位の寮で何を目的にするんだよ」


「分かりません。ただ、少なくとも魔法陣に詳しくないというのは、嘘だと思います」


アルノーはセインの後ろ姿を見送った。


彼の歩き方は、一歩一歩の歩幅が正確に一定だった。無意識でそこまで揃えるのは難しい。


学園には、まだ自分の知らない歪みが潜んでいる。アルノーはそう確信しながら、灰練の寮へと足を進めた。

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