表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
15/23

【15話】ホンキのカブキ 1

 

 (なつ)やすみがおわり、9(がつ)になった。


 その()(にち)(よう)()で、翔真(しょうま)たちは(なか)(うら)(しょう)(がっ)(こう)運動場(うんどうじょう)練習(れんしゅう)をしていた。


「きょうの練習(れんしゅう)はこれでおしまい。みんな、おつかれさま」


監督かんとく、きょうもありがとうございました」


 こどもたちが鳩山(はとやま)監督かんとく(あたま)をさげる。


「それじゃあ、みんなで()きますか」


 ニヤニヤしながら、陽介(ようすけ)がみんなのほうをむいた。


「ボウリング(じょう)に!」


「おぉー」


 ()()けしたこどもたちの()が、いきおいよく青空(あおぞら)にのびる。


 練習(れんしゅう)のあと、翔真(しょうま)たちは大人(おとな)一緒(いっしょ)にボウリング(じょう)にでかけ、()がくれるまで、ボウリングをたのしんだ。


「これでたのしいことは、ぜんぶやりきったね」


 ボウリング(じょう)をでたとき、()(くも)がいった。


(えい)()(かん)(しょう)、カラオケパーティー、(ゆう)(えん)()めぐり、いろんなことをしたね」


「のこすは(けん)(たい)(かい)だけか」


 (ゆう)()れの(そら)をみあげて、陽介(ようすけ)がつぶやいた。




 (けん)(たい)(かい)とは、その(けん)のナンバー(ワン)・ジュニアサッカーチームをきめる(たい)(かい)で、(ゆう)(しょう)したチームは(けん)(だい)(ひょう)として、12(がつ)にひらかれる全国(ぜんこく)(たい)(かい)出場(しゅつじょう)することができる。


 鳩山(はとやま)監督かんとく(はま)()サッカークラブの監督かんとく合併(がっぺい)来年(らいねん)までまってもらったのも、翔真(しょうま)たちを中浦(なかうら)FC(エフシー)として、(けん)(たい)(かい)出場(しゅつじょう)させてあげたかったからだ。




「そうだ、翔真(しょうま)地区(ちく)()(せん)のくみあわせ(ちゅう)(せん)(かい)って、たしか(らい)(しゅう)(にち)(よう)()だよね?」


 (おも)いだしたように、美羽(みう)がたずねる。


「いきなり、フレスベルグと(たたか)うことになったりして」


「フレスベルグはシードチームだから、最初(さいしょ)(たたか)うことはないよ」


「でも、おなじ地区(ちく)なんだから、()ちすすんだら、そのうち(たたか)うことになるんでしょ?」


「まあな」


「じゃあ、2()(あい)()がフレスベルグってこともありえるわけか」


 美羽(みう)がうでをくんだ。


 そのとき、


「なあ、みんな」


 陽介(ようすけ)がみんなに(こえ)をかけた。


「みんなはさ、(はま)()サッカークラブと合併(がっぺい)したあとも、このまま歌舞伎(かぶき)サッカーをつづけられると(おも)うか?」


陽介(ようすけ)、きゅうにどうしたの?」


 美羽(みう)がふしぎそうにたずねる。


合併(がっぺい)したら(せん)(しゅ)(かず)(おお)くなるし、なにより監督かんとくおしかただってかわる。そうなったら、おれたち、歌舞伎(かぶき)サッカーをつづけられるかな?」


陽介(ようすけ)――」


「なーんてな」


 陽介(ようすけ)がこちらをふりかえった。


(そら)がかなしい(いろ)してたから、ガラにもないこと(かんが)えちまっただけだよ。歌舞伎(かぶき)サッカーに反対(はんたい)する(ひと)もいるけど、応援(おうえん)してくれる(ひと)だって、たくさんいるんだ。だいじょうぶ、(がっ)(ぺい)しても歌舞伎(かぶき)サッカーはつづけられるさ」


 陽介(ようすけ)()(がお)でピースサインをした。


 でも、その()(がお)は、なんだか、むりしてつくっているみたいだった。



 *   *   *   *   *



 1(しゅう)(かん)()(にち)(よう)()


 地区(ちく)()(せん)のくみあわせ(ちゅう)(せん)(かい)(かざ)(ぶき)()(みん)ホールでおこなわれた。


 (ちゅう)(せん)(かい)にはチームのキャプテン、(ふく)キャプテン、監督かんとく(さん)()することになっている。


 中浦(なかうら)FC(エフシー)からも翔真(しょうま)陽介(ようすけ)鳩山(はとやま)監督かんとくの3(にん)(ちゅう)(せん)(かい)(さん)()した。


 最初(さいしょ)(たい)(かい)のスタッフから、マナーについての説明(せつめい)があった。


()(じょう)のことを、みなさんにはまもってもらいたいと(おも)います。そして、もうひとつ」


 ステージの(うえ)説明(せつめい)していたおじさんが、鳩山(はとやま)監督かんとくをにらみつけた。


「この(たい)(かい)はこどもたちにとって、とてもたいせつなものです。けっして隈取(くまどり)をして()(あい)にはでないように」


「それについては、この()たちともきちんと(はなし)をしています。(けん)(たい)(かい)では、けっして()()()サッカーを――」


「わたしは、やってもらいたいですがね」


 きゅうに大鳳(おおとり)監督かんとくが、いすからたちあがった。


「みなさんが、どう(おも)っているかは()りません。ですが、わたしは(かれ)らに歌舞伎(かぶき)サッカーをやってもらいたいですね」


(ほん)()ですか、監督かんとく!」


 (はる)()がさけんだ。


「ああ、(ほん)()だ」


 そして中浦(なかうら)FC(エフシー)のテーブルに(からだ)をむけた。


鳩山(はとやま)監督かんとく。たしか歌舞伎(かぶき)サッカーはこどもたちのアイデアでしたね。では、やるかやらないかも、こどもたちにきめてもらってはどうです?」


「しかし、それでは――」


鷹峰(たかみね)キャプテン、きみはどうしたい?」


 大鳳(おおとり)監督かんとくが、ためすように翔真(しょうま)()う。


歌舞伎(かぶき)サッカーをやりたいか、やりたくないか。きみの()(けん)()きたい」


「おれは――」


 翔真(しょうま)大鳳(おおとり)監督かんとく(ちょう)(せん)をうけるようにたちあがった。


「おれはやりたいです。歌舞伎(かぶき)サッカーは、おれたちのサッカーだから」


「ではきまりだ」


 大鳳(おおとり)監督かんとくがわらった。


 ……ようにみえたのは、たぶん()のせいだろう。


「スタッフおよび、ほかのチームのみなさま。もし、市沢(いちざわ)フレスベルグと中浦(なかうら)FC(エフシー)(たたか)うことになった()(あい)、その()(あい)歌舞伎(かぶき)サッカーでおこないたいのですが、それをこの()でおゆるしいただけないでしょうか」


 (かい)(じょう)がざわつく。


 進行役(しんこうやく)のおねえさんもステージ(じょう)のおじさんもオロオロするばかりで、どうしていいかわからない。


 そのとき、どこかのチームが、




 パチ、パチ、パチ。




 大鳳(おおとり)監督かんとく(はく)(しゅ)をおくった。


 (はく)(しゅ)(かず)はすこしずつふえ、ついには会場(かいじょう)をうめつくすほどになった。

「あぁー、もう! わかりましたよ」


 おじさんが、あらい(はな)(いき)をあげる。


「もし、中浦(なかうら)FC(エフシー)市沢(いちざわ)フレスベルグが(たたか)うことになった()(あい)、その()(あい)()()歌舞伎(かぶき)サッカーをすることを(みと)めましょう」


「ありがとうございます」


 つぎにおじさんは翔真(しょうま)をにらみつけた。


「フレスベルグ()(がい)()(あい)では、けっして歌舞伎(かぶき)サッカーをしないように。いいね?」


「はい」


「あの、歌舞伎(かぶき)戦術(せんじゅつ)は?」


 陽介(ようすけ)があわてて、たちあがる。


歌舞伎(かぶき)戦術(せんじゅつ)もつかっちゃダメですか?」


作戦(さくせん)(めい)歌舞伎(かぶき)のお(はなし)でつたえるやつだね。まあ、それぐらいは(みと)めるとしよう」


「ありがとうございます」


 すわるとき、おじさんにみえないようにして、陽介(ようすけ)翔真(しょうま)にガッツポーズをおくった。



 *   *   *   *   *



 そのあと、(ちゅう)(せん)(かい)がはじまった。


 対戦(たいせん)するチームのくみあわせは、(はこ)のなかから(すう)()()かれた(かみ)をとりだしてきめる、くじびき方式(ほうしき)でおこなわれた。


(いわ)()スポーツ少年(しょうねん)(だん)。12(ばん)


王川(おうかわ)ファイターズ。8(ばん)


下村(しもむら)ハレルーヤ。5(ばん)


 (かお)なじみのチームの抽選(ちゅうせん)が、つぎつぎにおこなわれてゆく。


「つづきまして、中浦(なかうら)FC(エフシー)


 ついに中浦(なかうら)FC(エフシー)(ばん)がやってきた。


 緊張(きんちょう)しながら、翔真(しょうま)はステージにあがった。


 心臓(しんぞう)()(どう)にあわせて、こめかみがうずく。


 じっとりあせばんだ()とはぎゃくに、(くち)のなかはカラカラにかわいていた。


「それでは、くじをひいてください」


 翔真(しょうま)(はこ)()をいれ、ちいさな(かみ)をとりだした。


 (かみ)には3の数字が()かれていた。


中浦(なかうら)FC(エフシー)。3(ばん)


 トーナメント(ひょう)の3(ばん)に、中浦(なかうら)FC(エフシー)のふだがつけられる。


 それをみて、翔真(しょうま)はハッとした。


 トーナメント(ひょう)の1(ばん)はシードわく。


 つまり市沢(いちざわ)フレスベルグのわくだ。


 もし、中浦(なかうら)FC(エフシー)が2(ばん)()()(みや)(エフ)(シー)()てば、つぎはフレスベルグと(たたか)わなければならない。


案外(あんがい)はやくできるかもな、歌舞伎(かぶき)サッカー」


 テーブルにもどると、翔真(しょうま)陽介(ようすけ)にいった。


「ああ。もちろん、あいつらに()てばの(はなし)だけどな」


 陽介(ようすけ)(よこ)()()()(みや)(エフ)(シー)のテーブルをうかがった。


 ()()(みや)(エフ)(シー)のキャプテンは、トップチームの(なか)()いりをはたした中浦(なかうら)FC(エフシー)(たたか)うことになり、がっくりと(かた)をおとしていた。



 *   *   *   *   *



 すべてのチームのくみあわせがきまり、抽選(ちゅうせん)(かい)(まく)をとじた。


「どうして、あんなことをいったんですか」


 かえりの(くるま)のなかで、(はる)()大鳳(おおとり)監督かんとくにたずねた。


 信号(しんごう)(あか)になり、大鳳(おおとり)監督かんとく(くるま)をとめる。


監督かんとくがすすめなければ、あいつらだって歌舞伎(かぶき)サッカーをするつもりはなかったんです。なのに、どうしてすすめたんですか」


「いいわけされてもこまるだろ」


「いいわけ?」


歌舞伎(かぶき)サッカーじゃなかったから、(ほん)()をだせなかった。そんないいわけをされたくなかったから、ああいったんだ」


 ――ウソがヘタですね、監督かんとく


 (はる)()は、大鳳(おおとり)監督かんとくのウソをみぬいていた。


 けど、なぜウソをつくのかはわからなかった。


実力(じつりょく)なら、いまの中浦(なかうら)のほうが()()(みや)より(うえ)だ」


 (ふく)キャプテンの(たちばな)(とも)(ゆき)がいった。


「おそらく、おれたちが(たたか)(あい)()中浦(なかうら)になる」


「そうでなくちゃこまる。たのしむだけのサッカーじゃ、(ほん)()のサッカーには()てないことを、おれたちがおしえてやるんだ」


 (はる)()(こえ)は、けっしておおきくはなかった。


 でも、はきだす(こと)()には、もえるようなあつい(とう)()がやどっていた。


 信号(しんごう)(あお)にかわり、大鳳(おおとり)監督かんとくがアクセルペダルをふむ。


 (くるま)がゆっくりとまえへ、そして()(らい)にむかって、うごきはじめた。



(つづく)



更新は毎日おこなう予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ